現地の生産業者とのやりとりには苦労も多いという(写真:イメージマート)
5月下旬、安く大量にまとめ買いできるとして人気を集める「業務スーパー」が販売した冷凍ピーマン(千切り)の一部から基準値を超える残留農薬が検出された。しかし、これは氷山の一角であり、厚生労働省の公表データを見ると、2024年度だけでも168件の輸入冷凍食品の食品衛生法違反事例が確認できた。
輸入冷凍食品の安全検査は他の食品同様、全国32か所の検疫所で水際対策が行なわれている。だが、決して万全とは言えない実態がある。食の安全に詳しいジャーナリストの小倉正行氏が言う。
「検査体制は全く足りていません。2023年度の食品衛生法に基づく全輸入食品の検査率は8.5%にとどまっており、ここ数年間は検査率一桁台が続いています。検査総数の2割強は抜き打ちの『モニタリング検査』ですが、違反の可能性が低い食品を対象に行なう統計学的検査のため、結果を待たずに輸入することができる。違反が発覚したときには食品がすでに市中に出回っているケースがあります」(小倉氏)
輸入冷凍食品を扱う業者は、日本の食品衛生法に定められた基準に合致した食品を調達するため、日々、現地の生産業者とやりとりを重ねているが、苦労も多いという。2024年度、中国からの輸入食品で大腸菌群が検出された輸入業者が語る。
「海外との取引では、専門機関によるサンプルの検査などを行ない、日本の基準に適合する商品であることを入念に確認しています。抜き打ち的な視察で製造工程を確認することもありますが、今回の違反事例では現地工場の安全意識が徹底されていませんでした。万一事故が起きれば、信用は一瞬で失われてしまう。輸入会社の責任も大きいと考えています」
別の食品輸入業者もこう話す。
「滅菌処理については現地工場の製造工程表をチェックしていますが、現実と乖離しているケースは珍しくない。取引していたある中国の食品加工会社の工場を抜き打ちでチェックした際は、床に魚が置かれていたり、マスクをしていない従業員がいたり、ハエが飛び交っていたりと衛生管理の杜撰さが見て取れた。すぐに取引をやめましたが、日本にいながらすべてを確認するのは至難です」