厚労省調査「実質賃金」の数値は「ボーナス増」の影響で歪んでいる?
日本企業は海外では現地の制度に準拠するケースが多く、世界で全社統一の給与制度を確立できたところはほとんどない。それが国境をまたいだ社員の移動が難しい原因にもなっている。
さらに、年俸制で採用されている海外社員から見ると、ボーナスと退職金が自分たちに適用されないのは“差別”と映る。
日本独自の給与制度の歪みは統計にも表われている。
厚生労働省の「毎月勤労統計調査」では、今年4月の働き手1人あたりの実質賃金は、前年同期より1.8%減って、「4か月連続マイナス」と発表された。
ただし、これまでの推移を見ると、2022年4月以降、昨年の6月・7月と11月・12月にプラスになった以外は、ずっとマイナスであり、この時期にプラスになったのはボーナス増の影響によるものと思われる。 実際、同調査の月給(きまって支給する給与)だけで言えば、昨年6月・7月も11月・12月も前年比マイナスなのである。
日本型ボーナスは“20世紀の遺物”
要するに、日本型のボーナスと退職金の制度は、月給を抑えて会社の利益が出たら分け前を分配するという「まず会社ありき」のシステムであり、働き手にとっては極めて失礼な制度だ。
なぜなら、個人の成果・業績に関係なく、その時々の会社の業績に左右される上、最終的な年収が確定しないからである。それゆえ、かつての日本のサラリーマンは、確実に毎月の収入を増やせる「残業」にせっせと励んでいたわけだが、それこそ本末転倒な話である。
日本型のボーナス・退職金制度は、20世紀の工業化社会の“遺物”とも言える。大量生産・大量消費で、工業製品を少しずつ改善しながらより多く作ればよかった20世紀の「Do More Better」の時代は、従来の延長線上でいかに勤勉に拡大再生産するかということが問われた。その中で企業は業績が上がったらボーナスをはずみ、業績が下がったらボーナスを抑えてきた。
しかし、21世紀にそんな遺物は通用しない。企業がグローバル化する中で「ボーナスおよび退職金の給与化」は当然のことであり、不可避である。