老後資金は貯めるばかりではなく「使う」「使い切る」ことも意識(写真:イメージマート)
老後の収入の大きな柱になるのが年金。就労を続けるなら給与も収入源になるが、いずれも個人差がある。金額にかかわらず、共通して判断したいのは、「増やすための投資をするべきかどうか」だ。埼玉県に住むAさん(59才)が嘆く。
「銀行に預けていてもお金は増えないし、新NISAにチャレンジしてみたい気持ちはありますが、最低でも10年は運用しないと思ったより増えないと聞いて、もういまさらかなと半ば諦めています」
たしかに60才を過ぎてからの投資は決してハードルは低くない。だが、ファイナンシャルプランナーの横川由理さんは「60代でもやった方がいい」と背中を押す。
「いまの時代、100才まで生きるんだから、いつ始めても遅くはありません。ラストチャンスは何才かと心配する人も多いようですが、いつから始めてもいいし私は死ぬまでやります。ただし60才を過ぎたら、“運用して貯める”という意識は手放すべき。運用して増やしながらどんどん使うんです」(横川さん)
ファイナンシャルプランナーの松岡賢治さんも「80才から始めてもいい」と言い添える。
「投資は10年運用すれば安全、利益が出るなどといわれますが、確定ではありません。いつ始めても、何年運用しても、金融商品のリスクとリターンは変わらない。それさえ理解していれば、少額でもお金が増えればいい、配当金や株主優待がもらえる可能性があるなど小さなリターンを狙ってチャレンジするといいですね」
2人がこう話す通り、老後資金は増やして貯めるばかりではなく「使う」、さらには「使い切る」ことへの注目も高まっている。ただし心配なのが、がんや認知症などの病気のリスクだろう。
「昨年から新NISAがスタートして投資人口は急増しました。シニアでも株を持っている人がたくさんいて、そこのニーズに合わせ、リスクを解消する仕組みが開発されてきています。たとえばマネックス証券は『たくす株』という認知症対策を始めました。
通常、認知症になれば証券会社は資産を凍結します。ところが、このたくす株だと認知症になっても家族が代わりに取引できたり、出金や財産管理をすることができるようになる。あくまで株だけで投資信託はありませんが、使い込みなどのトラブルが絶えない成年後見人制度よりは、家族に任せられる方がいくらか安心できると思います」(横川さん・以下同)