日本の大学入試も一般入試より総合型選抜が増えている(イメージ)
日本の大学受験において、推薦入試、特に総合型選抜に対する注目度が高まっている。総合型選抜の先進国、アメリカの大学入試では豊富な活動実績を積むことができる富裕層が受験で有利だと捉えられがちだが、実態はどうなのか。『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』が話題の受験ジャーナリスト・杉浦由美子氏がレポートする。【総合型選抜に潜む教育格差・全3回の第1回】
* * *
大学入試において、推薦入試が拡大され、報道も増えている中で、推薦入試への反発も起きている。
「推薦入試は活動実績や経験が重視されるからお金持ちの子が有利だ。一般選抜はペーパー試験なので公平だ」という意見はネットでしばしば見受けられる。中には権威ある研究者もそうコメントをしているWEB記事もあった。
この「推薦入試は金持ちに有利」という意見の根拠として、引き合いに出されるのがアメリカの大学入試制度だ。
アメリカの大学入試はすべて、いわゆる総合型選抜である。いわく、総合型選抜は「経験がすべて」。ゆえにハーバードやイェールなどのアイビーリーグと呼ばれる最難関大学群は、海外経験やスポーツなどの経験豊富な富裕層の子たち有利だという。
実は私もかつてそう思っていたのだ。
『実力も運のうち 能力主義は正義か?』(マイケル・サンデル・早川書房)を読むと、こんなことが書かれている。著者のサンデルはハーバード大学教授で哲学者だ。
ハーバード大学やスタンフォード大学の学生のうち、3分の2は所得がアメリカ国民全体の上位20%に属する家庭の出身で、アイビーリーグの学生のうち、所得が下位20%の家庭の子どもは4%未満だとのこと。
「勤勉で才能があれば誰もが出世できるというアメリカ人の信念は、もはや現場の事実にそぐわない」とサンデルは書く。
ドラマを見ていても、富裕層の子たちが名門高校で演劇やスポーツをし、名門大学に入っていく様子が描かれる。
このようなドラマを私は見てきたのでアメリカの「経験重視だから、いろいろな活動ができるお金持ちの子が名門大学には多く入学していく」という先入観があった。