集中投資が成功し、20代で億り人の仲間入り(写真:イメージマート)
元手50万円から投資を始め、現在の資産は80億円を突破したという、現役麻酔科医の個人投資家・たーちゃん氏(50)。有望株に集中投資するスタイルで、資産を一気に伸ばしてきたたーちゃん氏が億り人の仲間入りをしたのは29歳のとき。20代の頃はどんな投資をしていたのか。
たーちゃん氏は3年前にステージ4のがんと診断され余命宣告を受けている。そうした中で、ふたりの愛娘に向けて書いた著書『50万円を50億円に増やした 投資家の父から娘への教え』より一部抜粋・再構成して紹介する。
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不合格となった1年後、医師国家試験に無事合格した。合格すると、通常2年間は研修医として、とても忙しい日々を送ることになる。だから、株なんてやる余裕はないし、やってもいけないだろうと思っていた。
そこで、こう考えた。
「じゃあ、研修医の2年間は売買せず、寝かせておける株を買っておこう」
研修医の超多忙な日々が始まる前、その観点で買ったのが、オーストラリアの「金鉱株」だった。金鉱株というのは、金(ゴールド)や貴金属の採掘や精錬をする会社の株式のことで、「産金株」とも呼ばれる。
当時はゴールド1トロイオンス(約31g)を掘るのにかかるコストが500ドルくらい。これに対して売るときは1トロイオンス300ドルくらいでしか売れない状態にあった(ちなみに「トロイオンス」という見慣れない単位は、金・銀・プラチナなど貴金属の計量に使用される)。
つまり、掘れば掘るほど、大きな赤字になるという異常な状況だった。でも、採算がとれないからといって、世界中の金鉱山が閉鎖されるかといえば、それはあり得ないだろう。
ということは……「いずれゴールドの価格が上がっていくことは間違いない。だから、いまゴールドの鉱山の権利を保有する会社の株を買えば、研修医の2年間で上がるはずだ」と考えた。
そこでいろいろ調べた結果、当時赤字で株価が下がっていたオーストラリアの金鉱株に目をつけ、資金を投入した。
このとき入れたのは、家庭教師のアルバイトと株式投資で増やした600万円弱。20代半ばの若者の投資額としては大きいかもしれないが、「仮に全額失ったとしても、医師として働けば、いずれ確実にとり戻せる」と思ったから、あまり躊躇はなかった。
さらに2年間で研修医として稼いだ給料からも、この金鉱株に追加してつぎ込んだ。
その結果、研修医の2年間が終わったとき、金鉱株はもくろみ通り値上がりしていた。そこで1トロイオンス800ドルくらいまで上がったタイミングで売却した。
当時はゴールドを鉱山から運ぶ運転手の年収が1500万円くらいになったという景気のいい報道もあるくらいで、僕が買った金鉱株の株価も10倍以上に跳ね上がった。
そこで全株式を売却、一気に資産9000万円くらいまで増えた。
この9000万円を、さらに株式投資に回した。といっても、このころは研修医を終え、「麻酔科医」として独り立ちをし始めたころ。医師として労力の多くを割いていたから、そこまで株に注力していたわけではなかった。けれど、コナミコンピュータエンタテインメント東京(現 コナミグループ:9766)やサンシティ(2011年上場廃止)といった20~30銘柄に分散投資していた。
それらが少しずつ値上がりし、2005年末には資産総額1億円を超えた。29歳で、いまでいうところの“億り人”になったことに、ちょっと興奮した。