“こころのAI依存”にはどんなリスクがあるか(写真:イメージマート)
急速に生活の中に浸透し始めた対話型生成AI。なかでもアメリカのオープンAIが開発したChatGPTは、いまや世界で4億人の利用者がいると発表されている。ビジネスから日常生活まで、さまざまなシーンで活用されているが、なかには「自分を変えたい」「自信を持ちたい」と感じている人たちが「自己啓発」のために利用しているケースもあるようだ。生成AIにのめり込む人たちの実態を紹介するとともに、“こころのAI依存”が習慣化することの弊害についてレポートする。
「波動を引き寄せるアファメーション文」を作ってもらう
都内でネイリストをしている女性・Aさん(40代)は、今年に入ってから息子に使い方を教わり、ChatGPTを使いはじめた。最近では、もっぱら「引き寄せの法則」に使っているという。いったいどういうことか?
「私は前々から、思考は実現化するという、いわゆる『引き寄せの法則』を信じているんです。引き寄せメソッドの一つに『アファメーション』というものがあります。これは、自分に対して肯定的な言葉を繰り返し投げかけてあげることで、感情や思考、行動のパターンを変えて、自己実現に近づけるという考え方。私は以前、同じく美容業界の知り合いに紹介されたメンターさんのもとで、自己啓発のセッションに参加したこともあったのですが、セミナーでのトラブルを多々耳にしたことで、参加をやめることにしました。
最近では対面のセミナーなどとは距離を取り、ChatGPTに『私の不安を払拭し、愛の波動を引き寄せるアファメーション文を10個作って』などとお願いして、提案してもらっています。たとえば『すべての出会いは私を導くギフト』『私の波動は愛と感謝に満ちています』『私はありのままで愛される存在です』……みたいな文章です。こういう固定の文章だけでなく、毎朝、“今日はこういう一日にするためのアファメーションを作って”と依頼している知人もいますよ」(Aさん)
「感謝日記」をChatGPTに添削してもらう
都内の美容室でスタイリストとして働く女性・Bさん(20代)は、ChatGPTを使って「感謝日記」の添削をしてもらっているという。
「スピリチュアル界隈では『波動』はすごく大切な概念なんですが、波動を高めるための方法の一つに『感謝日記』というものがあります。感謝日記とは、その日一日におきたあらゆる出来事を思い出し、それに感謝をする日記。“波動を高めたいなら感謝の気持ちを毎日書くことが大切”という情報をTikTokで見てから、最初はノートに手書きで書いていました。でも、手書きだと続かず、iPhoneのメモ機能に入力するようになったんです。
でも、ただ書き続けていても効果があるのかと心配になり、ChatGPTに“私の感謝日記の添削とアドバイスをして”と頼んだら、すごく丁寧にアドバイスをしてくれた。たとえば『得られた新しい視点を加えてみましょう』『感謝することによって、自分のなかで生じた変化にも目配りしましょう』といった形で、やさしく提案してくれるんです。そこからChatGPTに毎日の感謝日記を見せて、コメントをもらうのが習慣になりました。
『波動』ってたぶん、心の習慣を言葉と意識で整えることなのかなと思うので、その手助けをしてもらっている感じです。人にはなかなか相談できない繊細な内容だからこそ、気兼ねなく相談できるChatGPTはありがたい存在ですね」(Bさん)