「迷ったら“自分本位”が最適解」と説く和田秀樹医師
人生100年時代が到来した今、長い老後をどう暮らすかは重要なテーマ。高齢医療を専門とし、約35年間で6000人の患者を診てきた精神科医で幸齢党党首の和田秀樹氏は、「老後」を捉え直す時代にきていると話す。
「人生100年時代が到来し、60代で定年退職を迎えても残り30年以上の時間が残されています。これまで家庭で義務を果たし、社会にも貢献してきました。そこから解放される定年後こそが人生の本番なのです。お金も健康も従来の常識に囚われず、新たな指標で生きていくことが求められます」
毎朝の通勤がなくなり、仕事上の煩わしい人間関係からも解放される。子供も独立しているケースが多いだろう。自由な時間が増える一方で、現役時代から収入は減り、歳を重ねるごとに体の不安も出てくる。何をどう選択していくのか、その決断次第で老後の生活はバラ色にも灰色にも染まる。数多の選択肢があるなか、和田氏は、「迷ったら“自分本位”が最適解」だと説く。
「数多の高齢患者を診てきた実感として、健康で充実した老後生活を送っている人の共通点は、何事も我慢せず自分のために生きていることです。私は幸せを感じながら老後を生きる『幸齢者』という概念を提唱しており、人生後半戦を『幸齢者』として生きるキーワードは自分本位な生き方にあるのだと分かりました」
孤独は怖くない
お金に関して、節約や貯金をしなくてはならないという考えを捨てるべきだと和田氏は言う。
「お金は持っているだけでは幸せになりません。日本人は85歳の時点で平均して1500万円ほどを残しているという調査もあります(2024年度「経済財政白書」)。実際に死期が近づくにつれ、『もっとお金を使えばよかった』と後悔する人は多い。贅沢を我慢した先に認知症になれば海外旅行や美食を楽しむ気力や能力は無くなってしまう」