インターネット時代、通信制高校の人気が高まっている(イメージ)
急速に進む少子化に伴い、全日制高校の定員割れがニュースとなる中、通信制高校が注目されているという。全日制に比べて時間や場所が制限されることのない自由な学習環境が支持を集めているようだ。
一方で、その実態や卒業認定の取り方など、馴染みがない人も多いだろう。日本最大級の教育イベント創設者で、大学特任准教授や学校法人理事など、さまざまな立場や役割で教育に関わり、通信制高校の創設にも関わった宮田純也氏が、通信制高校のニーズが高まる背景や、卒業認定の仕組み、代表的な通信制高校の特徴などを解説していく。宮田氏の著書『教育ビジネス 子育て世代から専門家まで楽しめる教育の教養』から一部抜粋・再構成して紹介する。
「通信制高校」の生徒数は増加傾向
高校には3つの課程があります。全日制・定時制・通信制です。多くの人が当たり前のように全日制高校に通っていましたが、今日では通信制高校が注目を集めています。
当初、通信制高校は勤労学生のために創設された課程でした。そのため、自分のペースで自由に学ぶことに配慮された仕組みになっています。
全日制は学校に毎日通い、クラス単位で決まったスケジュールで授業を受けます。一方で通信制は自宅学習が中心です。決められたカリキュラムに沿って、教材やインターネットを使って学び、年に数日から月に数回程度の定期的なスクーリング(登校日)や面接指導に参加する形態です。通信制高校は自分のペースで学べるため、時間や場所の自由度が高いことと、授業料が安いことが特徴として挙げられます。
不登校の児童生徒数の高止まりなどを受け、通信制高校の生徒数は近年増加傾向にあります。2015年から毎年連続で生徒数が増え続け、2024年度には29万118人と過去最高を記録しました。特に私立通信制高校の生徒数の伸びが顕著で、2024年度には22万9754人と、前年度比で2万2248人増加しています。 全体の高校生徒数に占める通信制高校生徒の割合も上昇しており、2024年度には9.1%となっています。
2023年度は通信制高校の総数は289校(公立78校、私立211校)でしたが、2024年度には通信制高校の総数は303校(公立79校、私立224校)となり、前年度から14校増加しました。また、2025年度には、公立通信制高校4校、私立通信制高校25校の新設が予定されています。
急激な少子化が進むなかで、このような通信制高校の躍進には目を見張るものがあります。新設校の多くは、全日制と通信制を併置する形態であり、特に私立全日制高校が通信制課程を開設する動きが目立っています。さらに、これまで私立の通信制高校が存在しなかった徳島県や群馬県、富山県でも新たに認可校が開校する予定であり、全国的に通信制高校の需要が高まっていることが伺えます。
全日制は生徒数が減少し続けており、過当競争になって定員割れを起こす学校が増えていますので、全日制高校の通信制参入には今日の情勢が顕著に現れていると言えるでしょう。全日制高校に比べて自由な教育活動が比較的実施しやすい通信制高校は教育活動により特色を持たせることができることもあり、さまざまな特色を打ち出した通信制高校の参入が相次いでいます。