高齢者は資産があっても「使わない」
お金の使い方は理想の最期につながる
僧侶で実業家の愛葉宣明さんは、日本人はお金を使うことを“贅沢”だと避ける特性があると話す。
「欧米では、なにかを学んだり知るためには対価が必要だったけれど、日本人はみんなで助け合って教え合って生きてきました。だから同調圧力が働くし、どこかで贅沢が悪だと思ってしまう節もあるでしょう」
後悔なく、かつ意味あるお金を使うには、そうした私たちの気質とともに、“正しい価値の見分け方”を知っておきたい。
「ラグジュアリーホテルのいちばん安くて小さな部屋と、一般的なシティホテルのスイートルームが同じ価格だったらどちらを選びますか? 経験が少ない人は、広くて豪華に見えるスイートルームを選ぶかもしれない。でも、たとえ小さい部屋だとしてもラグジュアリーホテルに1泊するとエントランスでの迎え方から、ホテルマンの立ち居振る舞い、すみずみまで行き届いたサービスまでなにからなにまで違う。
経験にお金を使うのは単なる贅沢ではなく、そういう非日常も含めた本物の質を知っているかどうかが、大きな差になります」(愛葉さん・以下同)
どんなことにお金を使うかを考えることは、自分の最期に思いを至らせる。
「いろんなところに旅行できて幸せだったなと思って死にたいとか、大好きなファッションに囲まれてよかったなと感じながらなど、どんなシチュエーション、気持ちで人生を終わらせたいか。その答えにお金を使えば、後悔しない使い方といえるでしょう」
菅原さんが言い添える。
「自分がやりたくてもできなかった経験を買うのもいいですね。小さな頃にピアノを習いたかったな、とかお母さんが持っていたお化粧品がほしかったな、とか。あのときできなかったいろいろにお金をかけて経験を積むと、幸せな最期を迎えられるはずです」
生活費でもモノでもなく、思い出と経験に?自分にとっても、大切な人にとっても後悔のない最期のために今日から「使う」ことを考えよう。
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※女性セブン2025年9月4日号