最期に後悔しないため「老後マネー」をどう使っていくか(イメージ)
金融庁が2019年に「老後は約2000万円の金融資産が必要」と試算して以降、超高齢社会が進む日本では、いかに貯め、増やすかが、議論されてきた。しかし、その貯めたお金を使い切って「ゼロで死ぬ」人は極めて少ない。実際に、内閣府が発表した「令和6年度年次経済財政報告」によると金融資産は64才まで年齢とともに増えるが、その後は大きく減ることがない。つまり、資産を取り崩せない高齢者が多いということだ。相続する子供や孫がいればいいが、相続先もなく遺産が国庫に入ってしまうケースも増えているという。であれば、お金を溜め込んだまま人生を終えるのではなく、しっかりお金を使い切っった方が、豊かな人生になるのではないか──。後悔しないための老後マネーの使い方を考える。【前後編の後編。前編から読む】
人間は貯めると手放したがらない
自分がなににお金を使いたいかを考え、逆算することは健康効果も期待できる。菅原脳神経外科クリニック院長の菅原道仁さんが話す。
「おいしいものを食べ歩きたいなら太らないように運動するとか、糖尿病にならないように気をつけたりするでしょう。運動やスポーツ、旅行などアクティブなことにチャレンジしたいなら足腰を鍛えますよね」(菅原さん・以下同)
お金を貯めることも決して悪いことではない。
「ハワイに行きたいとか、ヨーロッパで歴史的建造物を見たいとか、目的を持てば貯金にも意味があります。でも、もっと物価が高くなるかもしれないから、病気になるかもしれないから、と漠然とした不安があって貯めても意味がない。
人間は貯めたものを手放したがらない生き物で、脳科学的には保有効果といいます。高齢になると不安を感じやすくなり、さらに手放せない傾向が強くなりますが、貯めるなら使わないと意味がありません」
先が見えない時代だからといって、これから先の人生を過度に不安視すべきではない。社会保険労務士で、『ゼロ活~お金を使い切り、豊かに生きる!~』著者の井戸美枝さんが言う。
「不安ばかり抱えていると、人生は全然おもしろくないですよね。物価が高いというけれど工夫次第で乗り切れます。それよりも自分がウキウキする気持ちを大事にしたいし、お金はそのために使うべき。
私はいま、バレエのレッスンを受けているので高い衣装を買ったりしてます。お化粧品も安いから選ぶんじゃなくて、気持ちが華やぐものを選ぶ。“もったいないから”とほしいものをがまんする方がもったいないですよ」