留学生の指導には苦労する点も(写真:イメージマート)
学歴至上主義による激しい競争、厳しい就職難が常態化し、格差が広がる中国社会。修士号・博士号取得者の社会的評価が高く、中国での就職も有利になることから、日本で修士課程進学を希望する中国人が増えている。シリーズ「中国人留学生だらけの日本の大学院」、第3回は、中国人院生の指導に苦戦している日本の大学院の実態についてレポートする。【全4回の第3回。第1回から読む】
日本語能力が足らず会話が成立しない学生も
都内の私立大学の教授・Aさん(50代女性)は、「語学力の低さが指導コストを高めている」と指摘する。
「日本に留学する外国人学生は、日本語能力試験(JLPT)N1を取得しているケースが大半です。この試験は、N5(易しい)からN1(最難関)の5段階に分類されますが、N1は日本の新聞記事や論文などが読めること、基本的な語彙や漢字の知識があるかが判断されます。大学院に進学し、日本語でだいたい4万字以上の修士論文を書くのであればN1は必須でしょう。
現に中国人留学生のうち70%以上がN1を取得しており、N2も含めれば75%に達します(2024年時点)。しかし、なかにはN1を必須要件としない大学院もあり、未取得の院生も多数存在します。なぜ院試に合格してしまうのかといえば、彼ら/彼女らが面接の質疑応答に絞って訓練してくるからです。
いざ進学すると、まったく日本語での日常会話が成立しないこともある。そのため、2年間で修士論文を書かせ、かつ単位取得させて修了させることは非常に難しい。中国人留学生につきっきりで家庭教師のように指導しなくてはならず、教員が赤入れをして、ほとんど書き直すこともあります」(Aさん)