今年も新米の収穫が始まっている
「令和の米騒動」を経て米の価格が高まり、備蓄米を放出するまでの事態になり、米への関心が高まっている。そんな状況下で新米の収穫が始まっているが、佐賀県在住のネットニュース編集者・中川淳一郎氏は、先日稲刈りの現場に足を運び、農家から「今年は不作。値段は下がらない」という声を聞いた。米を巡る生産者の逡巡をレポートする。
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今年4月29日にコシヒカリの苗を植える手伝いをしたのですが、あれから約4ヶ月、8月18日に稲刈りの現場に行きました。苗を植える時は力仕事を手伝ったのですが、今回は特に私がやることはなく、現場を取材するだけです。稲刈りの手順をまずは説明します。
・コンバインを田んぼに入れて稲を刈る
・コンバインで同時に脱穀して、籾部分だけを車内に溜め、藁はどんどん後部から排出していく
・籾が限界までコンバイン内に溜まったら、ダンプカーの荷台に籾を放出する
・コンバインの容量限界3回分ほどの籾がダンプに溜まったらJAの「ライスセンター」に持っていき、乾燥・籾摺りをして玄米にする行程に回す
・その間もコンバインは稼働し続け、ダンプが戻るのを待つ
・ダンプは急いで田んぼに戻り、再び荷台に籾を放出
・JAが決めたその日の割り当て量まで刈り続ける
さて、今年の新米ですが、福井放送の報道では「【速報】新米コシヒカリ「概算金」過去最高額に 60キロ当たり2万9000円 去年より1万円以上アップ 農家への仮払い金、JA福井県」とあり、すでに値上がりしています。JAが農家に支払うのは1kgあたり483.33円。5kgであれば2416.65円です。
テレ朝ニュースでは『今年の新米5kg7800円も 異常な高値に業者も困惑 「備蓄米売り切れない」悲鳴も』という記事もあります。要するに、備蓄米を放出しようが、米の価格上昇は抑えられない、ということなんです。なぜなら一旦米の価格が高くなったから。これまで農家からすれば安過ぎた米の価格が「米騒動」により適正価格になろうとしているのだから、その流れを止める必要はないと考える。
さらに、農家も安定的な経営のために直売に力を入れようとしている側面があります。米の流通はあまりにも複雑かつさまざまな利権が絡んでいるため、詳細は割愛しますが、自身にとって親密な関係にある知人に安く米を直売した方が利益の面でも、あとは精神的な充足のためにも良い、と考える農家も少なからず存在します。
あくまでも自分にとってどのような選択が最高か、を考えた結果です。となれば、JAとしても、「JA離れ」を回避すべく農家に対して対価を上げようと考える。農家とJAの考えからすれば、消費者が安過ぎる価格を求めた米価がようやく適正になった、と考える側面もあるのです。