少子化や単身層の増加がペット業界の追い風となるか
ペット産業が好調だ。少子高齢化に伴う社会環境の変化を追い風に、高い成長率を続けている。今回は、個人投資家・経済アナリストの古賀真人氏が、最新決算で注目のペット関連企業の銘柄をピックアップし、解説する。
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ペット市場は世界で約39兆円になる規模であり、平均成長率は約6.6%の拡大が予測されている。その中で日本のペット市場は年平均成長率は約4.5%と、世界に比べるとやや低いものの、好業績を出している企業もある。
日本の場合、少子高齢化、核家族、独身世帯の増加というマクロ環境の変化があり、ペット市場の拡大を後押しする環境ともいえる。ペット産業の最大の市場はアジア太平洋地域であり、特に中国であるが、成長の最大要因は、「都市化の急速な進行による、住民のライフスタイルの変化」と言われている。これは、かつては番犬や家畜的役割が強かったペットが、近年においては「家族の一員」として扱われるような文化的なシフトが起きていること、また、そのことにより、特に若年層や独身世帯からも、家族の一員としてペットを迎えるケースが増加していることを示している。ペットが長寿化していることも見逃せない。
このトレンドは、ペットフード・医療・保険・ファッション・ホテルなどペット関連のさまざまな周辺サービスにも良い影響を与えることになる。今回は夏の決算シーズンで目についたペット関連企業をピックアップする。
アニコムホールディングス(8715) ペット保険の最大手
アニコムホールディングスは国内ペット保険市場において、保有保険契約数は130万件を超え、約60%以上となる圧倒的なシェアNo.1を占める業界最大手企業である。同社の事業の特徴はペット保険事業を中核としながらもペットのライフサイクル全体をサポートしていることである。具体的には、「みんなのブリーダー」や「こうのとりセンター」においてはブリーダーマッチングシステムを確立、独自の医療ネットワークによって全国の動物病院と提携し、保険利用の利便性を高める取り組みを行い、ペットを取り巻く様々なライフサイクルに対応したサービス展開を行っている。
8月7日に発表された2026年3月期第1四半期決算においては、前年比で売上+10.4%となったものの、経常利益▲40.7%、純利益▲41.5%、EPS▲37.8%という大幅な減益となった。その大きな要因は、アクサダイレクトのペット保険が販売終了となることを受けて、アニコムホールディングスが契約を買い取ることに伴う費用計上であり、2025年11月には契約移管が全て完了する予定だ。
この契約が移管されることで、アニコムホールディングスに新たな売上、利益が増加していくことを鑑みれば、今回の費用計上は非常に前向きにとらえることができる。そして、通期見通しについても経常益以下、各段階利益は前年比で▲30%を超える大幅減益の予想を出しているが、アクサダイレクトのペット保険を同社が全て移管した際にはその費用計上もなくなることから、大きな業績飛躍が想像できる。
このことが意識されてか、減益決算にもかかわらず株価は上昇を始めており、4月7日に433円だった株価は8月29日の終値においては903円と2倍以上の株価になっている。
日本国内の生命保険世帯加入率が90%に対し、ペット保険加入率は15%前後と言われているが、昨今、ペットが家族としての市民権を獲得していっていることを鑑みれば、この加入率は増加していくことが期待できる。
同社には業績数値からは気が付かない大きなポテンシャルを感じる。