日常にも冒険も1台でこなせる。そんな思いが全身に込められた6世代目の新型「フォレスター」。エクステリアを見ただけでも見きりの良さや快適な居住性を感じさせてくれる
“幅広いライフスタイルに応える正統派SUV”として1997年に初代モデルが登場した「フォレスター」。以来、5世代にわたって磨き上げてきたのは、高い実用性と走りの幅広い対応力、そしてスバル車のキモともなる先進の安全性だ。では、6代目となった今、新型モデルはどのような進化によって正統派としての立ち位置を守り続け、そして魅力をさらに向上させたのか? シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。今回は自動車ライター、佐藤篤司氏が新型フォレスターに試乗し、“進化の度合い”を探った。
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雪国で生まれ育ち、冬にはスキーに熱中してきたようなユーザーにとって“スバル車に乗る”ということに、ある種の“必然”を感じる人も多いはず。時を少し遡りますが1972年8月にスバルから「レオーネ4WDエステートバン」という乗用タイプの4WDが発売されました。それまで4WDといえば、トラックをベースにしたクロスカントリータイプがほとんどという状態でしたから、快適で高速安定性などにも優れた乗用車タイプの4WDは、大きな反響を呼びました。
スバルならではの水平対向エンジンを縦置きにしたパワートレーンと、そしてシンプルで軽量、左右対称の4WDシステム、つまり現在の重量バランスに優れた“シンメトリカルAWD”へと繋がるシステムを搭載した量産乗用タイプの4WD。その後、走りの適応力の高さを実現したレオーネ4WDエステートバンは業務用としてもちろんは、スキーやレジャーなど多様なニーズに応える本格的な“マルチパーパスカー”として、日本を始め世界から注目を集めました。さらに1975年1月、世界初の量産4WD乗用車として「レオーネ4WDセダン」が発売されると、スバル=オンロード4WDというイメージがさらに明確になりました。以来、半世紀にわたり、スバルはブランドとしての基本的な立ち位置を変えることなく進化してきました。ふるさと新潟に住む、幼い頃からのスキー仲間達の多くが“スバルへのこだわり”を持つのも、こうしたブランド姿勢があるからだと思います。
本来は電力会社などの作業用としての要望に応えるためだった「レオーネ4WDエステートバン」
現在の“シンメトリカルAWD”へと繋がるシステムを搭載した国産初の乗用車タイプ4WDバン。レジャーにも使える4WDの可能性を確立したといえる
では最新モデルにして、スバル・ブランドを牽引する重要な1台である6代目フォレスターはどうでしょう。新型が登場したときの見た目の印象としては「随分と立派に見えるなぁ」というもの。だがボディサイズをチェックすれば全長4655mm×全幅1830mm×全高1730mmであり、先代モデルより全長、全幅ともに15mmほど拡大しただけ。基本となるパッケージに変更はなく、プラットフォームも先代から引き継いでいて、ホイールベースも2670mmと変わりがありません。
立派に見えた理由はなんだろうかと考えると、フロントマスクに理由がありました。これまでフォレスターと言えば、他のスバル車とも共通する6角形の“ヘキサゴングリル”と、水平対向エンジンのピストンを表現していたというヘッドランプの“コの字型ライト”が明確に分かれていてそれぞれが存在感をしっかりと主張し、シンプルで分かりやすい仕上がり。夜間にスバル車が後ろに付くと、はっきりとそれと分かりました。
一方で新型フォレスターではヘッドライトとグリルが連続するようなデザインによって仕上げられ、全体としてはゴージャス感の向上が図られた印象。プレミアムSUVのような押し出し感の強さを感じましたが、北米市場をメインとするフォレスターの立ち位置からすれば、十分に理解できるデザインと言えます。
クルマの開発にはサイズ面でいくつもの制約があり、その中でクルマのデザインも創り上げられます。その制約といえば衝突安全、視界、そして空力といった要件で、これは不変とも言えます。その中で6代目が目指した高級へのアプローチは認めながらも、同時にシンプルにして好ましい仕上がりを見せるボディフォルムとの相性、さらに言えばブランドイメージの共通性からみると、好みの問題もありますが“スバルらしさ”が少しだけ希薄と感じたのは、スバル好きとしてのわがままかもしれません。