秋相場に関連する代表的な3つのアノマリーとは
石破茂・首相の退陣表明や日米関税交渉の決着を受けて動意づく日本株市場は、秋に向けて新たな局面へと進みつつある。例年、秋の時期に株式市場はどう動く傾向があるのか。億り人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が9月から11月にかけて意識される代表的な3つのアノマリーを整理し、それをどう投資行動に結びつけるべきかを考察する。
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夏相場が落ち着き、決算発表シーズンも一巡した。米国の金利動向や為替の影響を受けつつも、日本株市場は秋に向けて新たなステージに入っていく。この時期に投資家が意識しておきたいのが「アノマリー(anomaly)」だ。今回は特に秋相場に関連する代表的な3つのアノマリーを整理し、実際の投資行動にどう結びつけるかを考えていきたい。
アノマリーとは──理屈よりも経験則が効く市場の不思議
株式市場の「アノマリー」とは、学術的な根拠はないが、過去の相場で繰り返し観察される傾向やパターンを指す。たとえば「Sell in May and go away(5月に株を売れ)」や「クリスマスラリー(12月のクリスマス後から新年の1月にかけて株価が上昇しやすい)」など、耳にしたことのある投資格言もその一部だ。
アノマリーが成り立つ理由はさまざまだ。
・投資家心理の習性:季節ごとの資金需要や行動パターンが市場に影響する。
・制度要因:決算期や税制、配当支払いなど、企業・投資家の行動に結びつくイベントがある。
・過去の経験が未来を形作る:多くの投資家がアノマリーを意識することで、結果的に相場に織り込まれる。
もちろん「必ずそうなる」わけではない。だが相場のリズムを測る“参考指標”としてアノマリーを頭に入れておくことで、投資戦略に柔軟さを加えることができる。
【1】9月効果「1年で最も弱い月」
【特徴と背景】
9月は「1年で最も株価が下がりやすい月」と言われる。米国市場を中心に統計を取ると、9月の平均リターンはマイナスになることが多い。日本市場も米国の影響を受けやすいため、調整色が強まるケースが目立つ。
背景には、
・米国のレイバーデー(9月の第一月曜日)明けに投資家が夏休みモードから復帰し、ポジション整理が進むこと
・投資信託や年金基金によるリバランス売り
・年末に向けた資金需要の高まりによる換金売り
などが挙げられる。
【投資家がとるべき行動】
9月はむしろ「攻める月」ではなく「守りと準備の月」と考えるのが妥当と言われる。
・ディフェンシブ株を中心にポートフォリオを構築:食品、医薬品、電力・ガスなど景気変動に左右されにくい銘柄は相対的に安定している。
・成長株の押し目を待つ:9月に調整したグロース株を監視リストに入れ、10月以降の反発局面で拾う準備を進める。
・新規投資は分散買いを意識:9月中に一気に資金を投入せず、段階的に投資するのがリスク軽減につながる。