有隣堂には取り扱いがないことがオチになった「キムワイプ」回(YouTube『有隣堂しか知らない世界』より)
神奈川県を中心に、首都圏や関西に約40店を展開する老舗書店「有隣堂」のYouTubeチャンネル『有隣堂しか知らない世界』が好調だ。5年前にリニューアルすると、2025年8月末現在で登録者数約40万人、総再生回数約1億回以上にものぼる大人気チャンネルになっている。とはいえ同社の本業は「書店」。書店の減少、本離れが叫ばれるなかで、動画の伸びをメインビジネスにどう貢献させるのか。『愛される書店をつくるために僕が2000日間考え続けてきたこと キャラクターは会社を変えられるか?』の著者であり、同チャンネルを手がけている動画クリエイター・ハヤシユタカ氏に話を聞いた。【全3回の第2回】
取り上げた商品が有隣堂で取り扱いがなかった
ハヤシ氏が手がけた記念すべき第1回の動画『【超性能ティッシュ】キレイの概念が変わる!キムワイプの世界』では、有隣堂の文房具バイヤーが、理系の人には欠かせない紙ワイパー「キムワイプ」愛を熱弁した。しかし動画終盤で、同社には取り扱いがないことが判明。エンタメとしては“オイシイ”展開だが、会社の売上には一切結びつかない。再生回数は稼いでも、必ずしも動画の内容が運営会社の「利益」に直結しないケースがあることを、ハヤシ氏はどう受け止めているのだろうか。
「最初から、有隣堂に取り扱いがある商品だけを紹介しようという考えはなかったんです。経営層がそれを許してくれたのは大きいですが、とにかく第一は『面白い動画をつくって、ファンを増やすこと』であって、自分たちの目先の利益が先にはない。それは当初から今もブレていません」(ハヤシユタカ氏、以下同)
根底にあったのは「YouTubeチームの目標を『企業の売上に寄与すること』に置かない」という考え方。決して「紙が儲からないから、動画で儲けよう」という発想ではないのだ。では、企業YouTubeチャンネルの役割とは一体何か。
「もちろん営利企業なので、事業活動は売上に寄与することが最終目的ではあります。ただYouTubeチャンネルに関しては、売上に直結する活動を目標におかず、ファンを増やすという『広報』の立ち位置に近い。有隣堂の年間売上高は520億円を超えていますが(2024年8月期)、そのうちメディア露出が売上に与えた効果を測るのは難しいですよね。売上への寄与を考え出すとしんどくなって、きっとコンテンツは面白くなくなる。ファンが増えて、その結果、売上が増えるのが理想です」
そうはいってもハヤシ氏は、企業YouTubeチャンネルの“成功”は「企業利益を生むこと」だと考えている。
「矛盾するようですが、やっぱりYouTubeチャンネルの成功は売上や利益を伸ばすこと。そういう意味では、まだ『有隣堂しか知らない世界』も評価をいただいているだけで、“成功している”とは言えません。明確に『YouTubeの影響で売上が上がった』と言えて初めて“企業チャンネルの成功”になるんじゃないかと思います」
今年6月5日、累計再生回数は1億回を突破した