契約申し込みを撤回できるのか(イラスト/大野文彰)
突然、営業スタッフを名乗る業者に自宅を訪問されて「お得になりますよ」などと言われるがままに契約を結ばされる事例が後を絶たない。こうした訪問販売には契約の撤回ができるクーリングオフ制度があるが、どのような条件があるのか。実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
電力会社の営業スタッフが「管理会社に委託され、いまよりも電気代が安くなるので電力会社の切り替えをすすめています」と自宅マンションを訪ねてきました。管理会社に委託された業者だと思い手続きしましたが、後になって管理会社は委託していないと判明しました。契約から3か月以上経っていますが、クーリングオフはできますか。神奈川県・52才・パート女性)
【回答】
営業スタッフが突然自宅を訪ねてきて、自社と取引するよう勧誘し、その場で契約の申し込みを受ける取引は、特定商取引法の規制する訪問販売です。訪問販売にあった消費者はいわば不意打ちを受けて、熟慮する時間がないまま契約させられることから、同法では契約の仕方について詳細な条件を定めているほか、消費者から契約申し込みの撤回ができるクーリングオフ制度があります。
クーリングオフは、事業者から特定商取引法が定める文書(法定文書)を受け取った日から8日以内に書面やメールで撤回すれば、契約は無効になり、支払い済みの契約金等があれば返金請求できます。
また電力会社の切り替えで設備などを設置していれば、業者の費用で撤去させられるうえ、撤回までの電気代の支払い請求もできません。