こうした050番号の抜け穴をなくそうと、政府は2023年6月に050番号契約時の本人確認義務化の方針を発表した。
「この影響からか、2023年7月以降は、050番号に代わって国際電話番号の犯行利用が急増しました」
2024年4月、政府は携帯電話不正利用防止法を改正。050番号契約時の本人確認が義務化された。こうした経緯から、犯行に利用される電話番号の割合で国際電話番号が大部分を占めるようになったという。
先の警察庁のデータで、特殊詐欺に利用された電話番号の推移を見ると、法改正前後で国際電話番号の件数が変動している。2024年1月から3月は2000件前後だったが、4月には約4000件に急増した。
「犯行グループは、その時々の社会情勢に合わせて悪用しやすい番号を選んで使っています。国内の電話番号の法規制が強化されてきたことから、現在は法規制が及んでいない国際電話番号が使われるようになりました。犯行の足がつきにくいこともあり、国際電話番号を使った詐欺は今後もしばらく続くと考えられます」
アメリカ(+1)の番号が使われやすい理由
一口に国際電話といっても、さまざまな国からの着信がある。トビラシステムの調査によると、特に多い国がアメリカと中国だ。なぜ、これらの国からの発信が多いのか。まず、アメリカ(+1)の番号が使われやすい理由について、柘植氏が解説する。
「推測にはなりますが、アメリカではITサービスをはじめ、グローバル展開している企業が多いため、他国への発信も多いものと想像されます。そのため、着信を受ける他国からすると、アメリカから受ける国際電話について、他の国々と比べて正規・悪用の判別が難しく、防御の難易度が高くなります。
アメリカは通信サービスとして電話の仕組みも整っており、電話番号を提供するWebサービスも多数あるため、犯行グループが番号を取得しやすいという点もあります。これらの理由から、犯罪に悪用される割合が高くなっているのではないかと考えられます」