高齢者施設の費用はこんなに幅広い
備えとして覚えておきたいのは民間の認知症保険だが、認知症と診断確定したときに500万円の一時金が出るものを選ぶと、保険料は60才女性の場合月6370円と、決して安くはない。そのうえ掛け捨てなので、慎重な検討が必要だ。
この先認知症が進む可能性を考えると、在宅での介護を続けるべきか、施設に入居すべきなのか。金銭面だけを比較すると、在宅の方がコストはかからない。
「手すりやスロープをつけるなどの初期費用が平均74万円で、月々の介護費用の平均は5万3000円。光熱費や食費などを入れても月8万円程度です。
一方、施設の費用は平均で月13万8000円。平均的な介護期間である5年間に換算すると総額は約828万円にもなり、在宅介護より300万円近くお金がかかることになります」
リフォームは最小限、施設入居は夫婦一緒に
奈良県在住の女性・Dさん(65才・仮名)は、数年前に脳梗塞で要介護4になった夫の日常生活の介助をしてきた。ところが、今度は自分が倒れてしまった。
「脳出血で救急搬送され、車いす生活になってしまったんです。夫の介助が難しくなりましたが、それでも最期までふたりで暮らすために、終の棲家をどうするか考えているところです」(Dさん)
要介護4の夫と車いす生活で要介護2以上の妻なら、自宅で暮らすにはリフォームするか、利便性の高い家に住み替える必要がある。『私の老後のお金大全 一番シンプルで堅実な人生後半のお金の備えガイド』著者で社会保険労務士の井戸美枝さんはこう話す。
「金額だけを考えれば、いまの家を売って、利便性の高い中古マンションを買うのがベスト。家賃などの問題もあり、高齢のご夫婦がいまから賃貸を借りるのは難しいでしょう。老後はあまり住居にお金をかけない方がいいので、リフォームもできるだけ最小限に抑えてほしい」

