原告代理人の牧野裕貴弁護士
本誌『週刊ポスト』が追及してきたスキマバイトの企業側による直前キャンセル問題は、ついに法廷闘争に発展した。マッチング後にキャンセルされたという大学生の請求額は1万4000円。極めて少額の訴訟だが、その背後には300億円とも試算される巨額の未払い賃金がある。業界を揺るがす訴訟の衝撃とは──。
国会にも飛び火
問題は新たな局面を迎えている。10月29日、スキマバイト(スポットワーク)で働いていた神奈川県の大学生が「マッチング後にドタキャンされた」として、飲食店を訴えたのだ。
訴状によると、大学生は5~6月にスキマバイト最大手・タイミーのアプリから2店の飲食店の求人に申し込んでマッチングが成立したが、勤務日の前日に店側がドタキャン。そこで直前キャンセルにより得られなかった賃金と交通手当の計約1万4000円の支払いを求めて提訴した。金額こそ少ないが、この訴訟はスキマバイト事業者や雇い主の企業に多大な影響が及ぶ可能性がある。原告代理人である牧野裕貴弁護士はこう語る。
「スキマバイトの市場規模は1200億円以上に急成長し、店側のキャンセルによる未払い賃金は200億~300億円に上ると推定されます。今回の訴訟は未払い賃金請求に向けた流れに一石を投じる社会的意義があり、スキマバイトの働き手には未払い賃金を請求する権利があると知らしめるためのものです。働き手はこれから先も泣き寝入りせず、権利を行使してもらいたい」
1万4000円訴訟が300億円の巨額補償につながる蟻の一穴となるかもしれないというのだ。
