推しのぬいと一緒にお泊り
菊地さんはそうしたデータや自身の経験を含め、ニーズがあると踏んだが、社内では当初疑問視する声が多かったという。
「上司たちの、『そんなニーズが本当にあるんですか?』という半信半疑の部分を乗り越えるまでがちょっと大変ではありましたが、説得するしかありません。ぬいぐるみの市場規模や“遠征”による推し活をする人が増えていることなど、サービス提供の裏付けとなる資料をたくさん揃え、稟議にかけました」
プロジェクトメンバーの熱い説得にくわえ、初期費用があまりかからないという点が、導入の決定打になった。「お泊りセット」でホテル側が新しく準備しなくてはならないのは、ぬいぐるみサイズのベッドフレーム、ベッドリネンとガウン。大掛かりな工事や室内改造は不要で、難しかったら撤退するつもりだったという。
プラン料金は1泊通常料金にプラス300円(税込)。社内外からは「安すぎるのでは」という声もあったというが、菊地さんは、「弊社の姿勢として、“安定・安心価格”というものがあります。採算というよりは、とにかく楽しんでいただける方が増えたらいいなという思いです」と低価格設定の理由を説明する。
とはいえ、“一緒に泊まる”だけなら、一緒のベッドに寝ればいいのではないかという見方は残る。テスト導入時も「お客様はお金を出してまで利用するのか」という不安は拭いきれなかったという。
