「間違ったことはしていない」
そもそもなぜ計画を見直さなければならないのか。柳瀬はコロナ禍やウクライナの戦争のせいにしたが、まるで説得力がない。説明を求める大阪府に対し、柳瀬は、行政側が事業を潰そうとしている、と反論するばかりだ。
〈私は間違ったことはしていないと思っているので、国のためにしている事業でもあるので、もしこれを潰すのであれば、事業参加者もみんな協力してもらおうと思っている。(中略)債務超過状態となり信用が失われ事業が潰される。それによって今、寄ってきている大企業たちや資本家たちもみな消えていくということになる〉
実はこのあとのヒアリングで柳瀬は声をかけた大企業の社名まで挙げている。まるで圧力をかけているように受け取れるのだ。新たなマスタープランは今も共生バンクグループのウェブサイトで確認できるが、それもすでに行き詰まり、さらなる計画変更を迫られてきた。大阪府の関係者が説明する。
「当初の新プランは再生医療研究施設なども入っていたようですが、どんどん削られていき、最終的に残った中核施設は物流センターでした」
みんなで大家さんの柳瀬はゲートウェイ成田と称し、2000億円の開発費を投じる夢の街づくりプロジェクトとして、投資家たちから1580億円の出資を募った。そこから一転、物流センターへ転換するというのである。物流センターなら騒音の激しい空港隣接地でも運営可能で、現に成田周辺には倉庫群が点在する。むしろ航空貨物のことを考えると物流センターは効率的といえる。
反面、目新しくもなんともない。出資者たちは物流センターのために虎の子を吐き出してきたわけではないのである。
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【プロフィール】
森功(もり・いさお)/1961年福岡県生まれ。ノンフィクション作家。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2018年、『悪だくみ──「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一ノンフィクション大賞受賞。『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』、『菅義偉の正体』、『魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史』など著書多数。
※週刊ポスト2025年11月28日・12月5日号