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大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

米カリフォルニア州で持ち上がったハイテク新都市建設計画 背景にあるのは「人が住めない」シリコンバレーの深刻な住宅事情【大前研一氏がRTOCSで最新潮流を読み解く】

ソラノで進行中のハイテク新都市建設計画の狙いとは(イラスト/井川泰年)

ソラノで進行中のハイテク新都市建設計画の狙いとは(イラスト/井川泰年)

 アメリカのカリフォルニア州ソラノ群では、壮大なハイテク新都市建設計画が進んでいる。同州にはIT企業の聖地とも言われるシリコンバレーがあるが、そこに新たなハイテク新都市計画が持ち上がった背景に何があるのか。都市構想の概要や狙いについて、新著『RTOCS 他人の立場に立つ発想術』が話題の経営コンサルタント・大前研一氏が解説する。

 * * *
 いま、米カリフォルニア州サンフランシスコ郊外のソラノ郡でハイテク新都市の建設計画が進んでいる。

 報道によると、カリフォルニア・フォーエバーという会社が2018年からソラノ郡の農地や牧草地、空き地を徐々に買い上げ、これまでに10億ドル(約1500億円)を投じて約260km2の広大な土地を取得した。この面積は東京の中央区の26倍、世田谷区の約4.5倍に相当する。

 そこにロボットや航空・防衛、造船、エネルギー、物流などの先端企業を集めるとともに住宅、学校、商業施設を整備し、既存のサスーンシティの拡張としてゼロから新都市を建設する。現在のソラノ郡の全人口に匹敵する約40万人が住み、4万人の雇用を創出するという計画だ。夢物語のような話だと思う人も多いだろうが、私はこの新都市構想は成功するとみている。

 開発を主導するカリフォルニア・フォーエバーのCEO(最高経営責任者)はチェコ出身で元ゴールドマン・サックスのジャン・スラメック氏。同社にはベンチャーキャピタリストのマーク・アンドリーセン氏やベン・ホロフィッツ氏、故スティーブ・ジョブズ氏の妻ローレン・パウエル・ジョブズ氏、リンクトイン共同創業者のリード・ホフマン氏ら、テック業界の著名なビリオネアたちが出資している。

 この壮大な新都市建設計画のきっかけは、シリコンバレーの住宅事情だろう。いまやシリコンバレーは住居費が高騰して人が住めない状態になっているからだ。

 地元の不動産会社のHPによると、シリコンバレーの平均家賃は、1ベッドルームが3500ドル(約53万円)~4000ドル(約60万円)、2ベッドルームが4500ドル(約68万円)~5500ドル(約83万円)。しかも、通勤時間帯のフリーウェイは大渋滞でにっちもさっちもいかない。

 このため、セールスフォース、スクエアなどの企業は、シリコンバレーからサンフランシスコに移転した。しかし、サンフランシスコはフェンタニル(合成麻薬)汚染で治安が悪化している。近郊のバークレーやオークランドは住宅街の広がりがなく、テック企業が集積しているサンフランシスコ・ベイエリアは住宅問題対策が焦眉の急となっている。

 その点、ソラノ郡はカリフォルニア州の内陸にある州都サクラメントとサンフランシスコのほぼ中間にあり、どちらにも車で1時間余り。広大な農地や牧草地が広がる長閑な田園地帯で、サンフランシスコ湾につながるグリズリー湾に面しているからサンフランシスコには船でも行ける。自然が豊かで満天の星も美しく、住むには最高の環境だ。

 実は、今から半世紀以上前、私がマッキンゼーに入社して最初の仕事が、このソラノ郡における日本企業の農業用機械などの売り込みだった。現地のモーテルに半年にわたって泊まり込み、農地の所有者や役所に営業活動を展開した。飲食店はほとんどなく、夜は寂しくて死にそうだった。だから、ソラノ郡がどんな土地かはよくわかっている。

 また、私はUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)教授でスタンフォード大学客員教授も務めていたから、サンフランシスコ・ベイエリアを熟知しているが、ソラノ郡に手頃な値段の良質な住宅と先端企業の産業団地を核とする新都市を建設し、スタンフォード大学かUCバークレー(カリフォルニア大学バークレー校)に分校を作ってもらえば大成功するだろう。ビリオネアたちがこの計画に出資しているのは、そう確信しているからだ。

 IT企業の聖地であるシリコンバレーに代わり、ここ「ソラノ」が最先端企業にとっての“最後の聖地”となるに違いない。

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