「江東区」で物件価格の高騰が続く背景とは(豊洲・晴海通り。写真:イメージマート)
東京都心部で新築マンション価格の高騰が続いている。多くの人にとって新築物件は手が届かない存在となったことにより、中古物件も“連れ高”となっている状況がある。そうした状況が生まれる背景には、これまでに見られなかった需要の存在があるという。不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏(オラガ総研代表)が解説していく。
不動産経済研究所の10月の発表によれば、2025年度上半期(4~9月)の東京23区の新築マンション価格は前年度同期比で20.4%上昇して1億3309万円となった。その背景にあるのが供給の減少だ。不動産調査会社の東京カンテイによると、2025年1~9月の都内の新築分譲マンションの供給戸数は1万1226戸で、1990年代前半以来の水準に落ち込んでいる。牧野氏が言う。
「マンションの供給戸数がこれだけ減ってしまった最大の要因は、コストプッシュ型のインフレを不動産業界が先取りしていることです。土地は高いし建築費も高い。購入者の年収がそれに応じて増えていれば話は別ですが、実質賃金が下がり続けるなか、郊外や地方で実需としての住まいを求める層に対し、手が届く価格での物件の供給ができない状態になっています。
新築物件が非常に少なくて高騰しているわけですから、いい物件に住みたいという実需を求める人にとっては、非常に迷惑なマーケットになっています。そういった人たちが中古物件に殺到するので、中古市場も連れ高で上がっている。中古でも投資対象となる状況も相まって、東京都区部に限定すると中古物件でさえ平均価格が1億円を超えています」(以下、「」内コメントは牧野氏)
いわゆる“庶民”にとっては手が届かない価格帯となっている。
「一方で東京以外の首都圏の主要都市の水準を見ると、東京カンテイのデータでも70平米のファミリーマンションの中古価格は5000万円を目前にして伸びていない。これは現状の一般庶民の収入水準では5000万円を超える物件には手を出せないということを表わしているのだと見ています」
