実証実験から営業列車への本格導入へ
次世代バイオディーゼル燃料を導入した気動車に貼られたシール(画像提供:JR西日本)
気動車へのバイオディーゼル燃料の導入は段階的に進められた。
まず、先述の公募に対する実証実験を実施した。2022年度はエンジン性能試験、2023年度は試運転列車での走行試験、2024年度は営業列車に投入した気動車を用いて、長期的に使用したときの車両性能への影響を確認した。
この結果が良好だったことから、気動車に100%次世代バイオディーゼル燃料を本格導入した。該当する気動車は、2025年11月11日からJR西日本の岡山エリアで営業運転を開始した。これによって、当該列車でのCO2排出量が実質ゼロになった。
なお、ここで述べた100%次世代バイオディーゼル燃料は、その名の通り純粋なバイオ燃料だ。軽油などの他の燃料が混在していない。廃食油や廃動植物油等を原料としているため、わたしたちの食料とも競合しない。気動車のエンジン等の交換や改造を必要とせず、そのまま軽油の代替として使用できる。
以上述べた取り組みは、今後国内でバイオディーゼル燃料を導入した気動車が広がるきっかけになるだろう。
鉄道は、自動車や航空機よりもエネルギー効率が高く、環境負荷が小さい輸送機関だ。今後は今回紹介したような取り組みによって、より環境性能が高い輸送機関へと進化し、持続可能な社会を支える存在になることを期待したい。
【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。「川辺謙一ウェブサイト」も随時更新。
