借金を踏み倒された側の本音とは(写真:イメージマート)
借金がきっかけで人間関係が壊れることがある。過去に複数の知人に合計1880万円を貸して1040万円は回収できたものの、貸した相手8人中7人との間に感情のしこりができ、結局7人と縁を切ったというのは、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏(52)だ。その中の1人、Aさん(70代女性)が140万円を返さないまま、昨年末に亡くなったという。いま中川氏は何を思うのか。借金を踏み倒された側の偽らざる思いについて、中川氏がレポートする。
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まずはご冥福をお祈りいたします、と言いたいところではありますが、そんなに私は高潔な人間ではない。冷たいかもしれませんが、「借りたカネくらい少しは返す努力ぐらいは見せてみてはいかがでしたか? 1万円でもいいですよ。それをしないで逝っちゃったんですか?」と正直思うのです。
Aさんは70代のスナック経営者だったのですが、店は狭いながらも一等地にあったため毎月の家賃の支払いが厳しい。恐らく月20万円は超えていたと思います。というのも、借金の依頼が、毎回70万円か25万円だったんですよ。これは3ヶ月分か1ヶ月分の家賃でしょう。店のオーナーから「今回は3ヶ月分もらわなくては困るんですよ!」なんて言われた時は3ヶ月分、ある程度順調に払えていた後、「今月分はヤバい!」という時は1ヶ月分を私に借金してきたのだと推測します。
当時、私も人が良かったのかつい貸してしまい、その都度、「淳ちゃん、ありがとね。本当に助かったわ……」とこちらを拝みながら言われたものです。私もその店は好きだったため、「こんな良い居場所がなくなるのは自分にとってもよくないので、大丈夫です」と伝えていました。しかし、度重なる借金の依頼については思うところもありますし、何よりそのスナックのビジネスモデルに言いたいこともありました。
少しでも店の売上が上がるように様々な提案をしたが…
何しろ、「一見お断り」の店だったのです。店は、1980年代~2000年代にかけ、メディア人や広告人にとって居心地の良い場所でした。気鋭のクリエーターや大企業のエリート社員などが集い、彼女は客から慕われていた。だからこそ、知らない人間が入ってきて、その空気が壊れることを嫌がったのですね。
しかし、2000年代後半にも入ると、当時の常連客も定年退職を迎え、店に寄り付かなくなる。となると、それらの世代よりも20~30歳ほど若い当時30~40代の私とその仲間が常連として売上を引っ張らなくてはいけなくなる。しかし、過去の常連客の撤退人数と比べると、我々世代が連れてくる新規顧客は少ないし、売上もそこまで伸びない。私と他数名の常連で、近くで飲んでいた場合は2次会会場としてこの店を頻繁に利用していたのですが、団塊世代の呑兵衛ボリュームゾーンの人がごっそりいなくなった以上、焼け石に水だったのでしょう。
私は何度か、「Aさん、そろそろ一見の客も入れてはいかがですか? もう、昔の上客はあまり来ないですよ。その一見の客が常連になってくれるかもしれないではないですか」と提案したことがあります。しかし、彼女は頑なに「昔の常連さんが来た時に席がないと困るじゃないの!」と受け入れなかった。
Aさんも高齢になっていたので、身体のことを気遣って、「たまには休んだらどうですか?」と提案したこともあります。もちろん、その時に売上がなくなると彼女も困るでしょうから、私は知人でそれなりに知名度のある人を「一日店長」にして、イベント的にTwitter(当時)で告知をし、営業をしてはどうかと提案したのです。もちろん場代も払うと伝えましたが、結局、却下されました。
彼女なりのこだわりがあったのでしょうが、こうした頑固な経営方針ではうまくいくわけもありません。私が貸したお金についても、一部返してもらったことはあったものの、結局140万円は回収できず、その店を私が訪れることもなくなり、縁が切れて今回の訃報を聞くに至りました。
