将来の売却前提なら大規模なマンションが有利
「駅から徒歩10分圏内で、大京を除くメジャーセブン(住友不動産、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス)のブランドマンションで、2010年以降に建てられた70平米、3LDK程度の物件ということになるでしょう」
将来、売却することを想定しているのなら、戸数が多い大規模なマンションの方が有利だという。
「大規模マンションが有利なのは、流動性が高いからです。売り出しの事例が多いほうが相場を形成しやすいのです。不動産会社が物件の値付けをする場合、基本的に成約事例を参考にします。たとえば、10世帯しかないマンションで成約事例が5年前に1件だけという場合、現在価格を想定しにくく、近隣の似たような物件を参考にすることになりますが、往々にして“安売り”してしまうことがあるのです」
買い手がつかなければ売れないのが不動産だが、買うほうも売るほうも相場がはっきりつかめない状態では、売却・購入の判断もしにくくなるわけだ。加えて、“区ごとの人気”も気にしたほうがいいという。
人気は“西高東低”から“東高西低”に
「都心部を除いて、東京都内のエリアごとの人気は、コロナ前後で、“西高東低”から“東高西低”へと逆転しています。バブル時代を経験している50代以上の方は、高級住宅街のイメージがあった世田谷区や杉並区を好みますが、それより下の世代にそうした傾向はほとんどなく、田園調布(大田区)と聞いてもピンときません。
今は江東区や品川区の湾岸エリアに人気が移っています。江東区の人気が上がったのは、豊洲にタワーマンションが建ち並んだおかげ。銀座など中心地への距離が近かったのに割安で、もともとポテンシャルが高かったからです。しかも、新築マンションが建つことで、周辺の中古マンションも値上がりしていきます」
将来的にも開発が続き、人口が増えていく可能性が高いエリアはポテンシャルが高く、人気が高まっているということだ。ただ、“人気がある街”といっても、本来の実力以上に人気が高まっているエリアは注意が必要だという。
「若者に三軒茶屋や恵比寿などが人気あるといわれますが、これはテレビの情報番組などが作り出したイメージによるものだと見ています。『恵比寿にこんなおしゃれな飲食店が』と紹介されて、『住みたい街ランキング』に上位に入ってきて人気が上がったわけです。しかし、メディアが“住みたい街”として取り上げたエリアのなかには、街のポテンシャル以上に価格が高いと感じる街、つまり“割高な街”があるのです」
これはあくまで資産価値で見た場合の基準であり、住みやすいかどうかはまた別の話であり、ひとつの指標に過ぎない。人によってマンションに求めるものは異なるので、そこだけにとらわれるべきではないという稲垣氏が、世田谷区の場合について関連記事『《世田谷区・中古マンション「資産価値が上昇期待の地区/期待できない地区」》人気先行の「三軒茶屋」「駒沢」に疑問符 交通利便性・価格・資産性に優れた街とその条件とは 不動産仲介のプロが徹底検証』で詳しく解説している。
【プロフィール】
稲垣慶州(いながき・よしくに)/(株)KIZUNA FACTORY(キズナファクトリー)代表取締役。レオパレス21で建築営業を経験した後、27歳で賃貸不動産会社を創業して取締役に。2014年に33歳で独立し、KIZUNA FACTORYを創業。売買仲介とマンション買取リノベーション再販を行なう。通算3000組以上の接客経験を活かし、不動産業界の透明化を目指す。YouTubeチャンネル「東京不動産大学」を運営するほか、X等でも情報発信をしている。
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取材・文/清水典之