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キャリア
麻布志願者減の実態と中学受験の変化

麻布中学の志願者減少の背景にある“複合的な要因” 中学受験層の変化、地理的問題にくわえ、“学習塾講師の変化”を指摘する声も

麻布中学の入試実績(学校ホームページより)

麻布中学の入試実績(学校ホームページより)

「麻布に向いている生徒」を見抜く講師が減っている

 一方で、御三家でも2026年入試の志願者動向で麻布だけが減少したのはなぜか。

 開成はトップ校なので学力最上位層が集まる。武蔵は練馬区江古田にあり、埼玉方面から通いやすいので、埼玉在住者も受けにくる。彼らは、広尾にある麻布は、通学に時間がかかり避けがちだ。埼玉は「日本一教育熱心」な地域ともいわれ、難関志向の家庭も多い。この地域の受験生は、開成や武蔵を受けても麻布は地理的な理由で受けないことが多い。

 また、麻布は入試で「思考力問題」と呼ばれる「初見で解くのが難しい」問題を出す。麻布の算数の「思考力問題」の解説を見ていると、「これはトレーニングして解ける問題なのか」と感じる。独特の「センス」や「発想力」のようなものを求める問題に見える。もちろん、麻布の算数もすべてが思考力問題ではないから、ちゃんと学習して対策をすれば合格できないわけではないが、あの「思考力問題」が解ければ有利になるだろう。算数以外の科目の入試、たとえば社会なども知識の暗記量を問うのではなく、記述式の「思考力問題」が出る。

 指導歴30年で、大手塾の経営にも長年携わり、現在は横浜の石川町で中学受験専門の国語塾PREXの渋田隆之塾長はいう。

「偏差値が足りてなくても麻布の入試問題に向いていて合格する可能性がある生徒はいます。かつては講師がそういった生徒を見つけて麻布の受験を勧めましたが、今、それができる講師が減っているということも原因のひとつかもしれません」

 実際、模試偏差値と合格者の分布図を見ると、渋谷学園渋谷の合格者は偏差値に比例するが、麻布は一部で“下剋上”が起きている。つまり、偏差値だけ見ると届かないが、「麻布の入試に向いている生徒」がいる。

 あの「思考力問題」を解けるか否かを見極められる講師が減っているという指摘だ。

 保護者は、塾の受験校選びの面談で「この偏差値だからこのあたりを受けてくださいという感じだった」と不満そうだった。そういった偏差値しか見ない受験校選びだと、麻布を受ける生徒は減っていくということだ。

 とはいえ、前述した通り「憧れの麻布」人気はまだ健在だ。中学受験の主流が中堅層になってきて難関校を目指す生徒が減っていること、地理的な問題、そして、麻布に向いている生徒を見いだす講師の減少など、複合的な理由から麻布の志願者は減っているが、人気は相変わらずということだ。

(前編から読む)

【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(ともに青春出版社)も話題に。『ハナソネ』(毎日新聞社)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)、『東洋経済education×ICT』などで連載をしている。受験の「本当のこと」を伝えるべくnote(https://note.com/sugiula/)のエントリーも更新中。

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