皮の表面のカリカリと餡のうま味が絶妙な餃子
圧巻の餃子5兄弟
本稿の冒頭でこの界隈に身内が住んでいたと書いたが、それは父である。一人暮らしの父の身の回りの世話を、ある中国人の女性がしてくれていた。私は父から紹介されて、その人の手料理もご馳走になったことがある。
餃子だった。シイタケの風味の効いた絶品で、その女性は水餃子と焼き餃子の両方を作ってくれた。父とどんな関係であったかは父にも聞かなかった。当時、還暦目前で病にも倒れた父にとって、たまに掃除に来て、おそらくは少しばかりの食事も作ってくれたであろう人は、とても大事な人だったに違いない。遠く日本までやってきて、どんな経緯か知らないが、弱った年寄りの世話をしてくれる外国人女性のやさしさに、私は言葉も出なかったことを、よく覚えている。
「すいませーん! 餃子ください!」
私の回想を覗き込んでいたかのように、ケンちゃんが餃子を頼む。そうそう、こちらの餃子はたいへんな評判であるらしい。
そのひと皿が来るまでしばし歓談。話題はまず、最近の体調について。まあ、体調なんて気取ったことではなくて、尿酸値は薬で抑えよ、といった程度の話。そういうしょうもない話は主に私がするのですが、次なる話題は、3月末に行われたドバイワールドカップだった。中東の緊迫した情勢を考慮して、日本では馬券の発売はなかったこのレース、日本が世界に誇る最強馬フォーエバーヤングが最有力と思われた。
ところが、この最強馬が敗れたのである。勝ったのはアメリカのマグニチュード。フォーエバーヤングより1歳若い4歳馬だ。レースはこの馬がリードする形で進んだ。そこをぴたりとマークしていたフォーエバーヤングは絶好のポジションから最後の直線に入ると思えた。しかし、マグニチュードはむしろフォーエバーヤングを引き離して逃げ切ったのだ。
「あれ、強かったよねえ」
「逆に離されましたからね」
「坂井(瑠星)も、いい乗り方していたから、しかたがないよ」
「強い馬がいるものですねえ」
今、中年のケンちゃんと初老の私は、ドバイワールドカップの最後の直線の映像を思い浮かべながら、レモンサワーをくびりとやり、肉だんごを頬張る。
はあ、のん気だねえ。
悲嘆も落胆も、激昂も口論もなし。昼酒はこうでなくてはいけない。
餃子がやってきました。おお! むっちりしている。肉感的である。5つの焼き餃子は左から右へと少しずつ大きくなっている。餃子の5兄弟が並んで寝ている。いちばん右の兄ちゃんは、新関脇熱海富士みたいな貫禄。圧巻の見栄えなのだ。
レモンサワーをお代わりして、餃子を口へ。
皮が厚い。しかし、重たくはない。表面のカリカリ、皮のもちもち、そして餡にうま味があって、噛むと口の中に幸福感がじわりと広がっていくのだ。
「これは、うまいねえ。酢コショウでもいいけれど、何も付けなくてもいけますね」
「ほんとだ。味がいいね。食べ応えもすばらしい」
