地元のニーズをとらえ定員を充足させる新設校も
一方で、2018年からは、大学で定員割れが継続すると、補助金が減らされるというルールが強化され、大学の統廃合が促されている。一定の条件をクリアしたら新設は認めるが、開校後に大きな定員割れが続けば補助金をカットし、「退場」を促すという仕組みなのである。
この大学の新規設置が国民から批判的に語られるのは、補助金という公金が投入されるからだろう。「大学が増えすぎているのに、さらに新しく作るのは止めてほしい。税金の無駄使いにつながるだけだ」という理屈だ。
しかし、2026年度の新規開校の5大学のうち、3大学では定員が充足していると報じられている。どこも定員は100人以下の単科大学で、地元のニーズをくみ取っているように見える。
たとえば、その中の1つが、福岡県太宰府市の福岡国際音楽大学だ。「医療系の単科大学ならまだしも、音楽大学の新規設置?」と思う読者もいるだろう。しかし、そこには、ちゃんとした計画性や意図がある。
政令指定都市所在の都道府県で音楽大学がないのは福岡県だけだった。福岡県は2025年の出生数が3万3027人。将来的にも十分に子供の数がいる。県内には音楽大学への進学を希望する高校生は一定数いるだろう。定員は80人と小規模で手厚い教育も期待できる。公式サイトには九州交響楽団との連携も謳われており、そういった地元の楽団への人材の輩出も期待できる。国際医療福祉大学・髙邦会グループが運営し、大学経営には知見があると想像できる。
つまり、「リアルな地元のニーズ」を把握し、新規開校して定員充足している大学もあるのだ。
今回は「少子化で定員割れの私大が6割の時代に、なぜ新規で大学ができるのか?」という疑問について言及をした。その答えは「条件をクリアしていたら認可する決まりがある」からだ。条件さえクリアしていれば、認可をしなくてはならない制度になっているわけだ。その一方で、新設の大学でも定員を充足しているところも複数あり、明暗が分かれている。
ここでまた疑問が出てくる。条件をクリアすれば認可されるとしても、なぜ「無理そうな大学」を申請する組織があるのだろうか。次回はそれについて考えていきたい。
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【つづきを読む→】地元では「この大学は不要です」と厳しい声も… 佐賀県の新設大学の“定員充足率26.4%”騒動の本質はどこにあるのか
【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(ともに青春出版社)も話題に。『ハナソネ』(毎日新聞社)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)、『東洋経済education×ICT』などで連載をしている。受験の「本当のこと」を伝えるべくnote(https://note.com/sugiula/)のエントリーも更新中。