「目標は与えられるもの」ではない(イメージ)
チーム一体で迷いのない判断や行動をもたらすためには、自律的な目標設定が必須だ。しかし日本企業では、目標は上から与えられるものとされ、自ら設定する機会が少ない。このような状況では、部下は自ら判断することが難しくなり、結果として指示を待つ行動様式が強化されてしまう。
自律的に考え自ら仕事をするようになる部下をどう育てるか──。元グーグル人材育成統括部長として、リーダーシップ開発と組織変革を統括したピョートル・フェリクス・グジバチ氏による著書『世界の一流は「部下」に何を教えているのか』から一部を抜粋して再構成。【全3回の第3回】
上司に問われるのは「目標設定能力」
プロフェッショナルという視点で上司の在り方を考えるならば、上司にとって最も重要なビジネススキルは、「目標設定能力」だといえます。目標設定能力とは、会社が求める成果を、チームや部下が迷わず判断し、行動できる形に翻訳する力です。
目標は単に上司の理想像を示すものではなく、達成する目的(Why)が明確で、何をやるか(What)、いつまでにやるか(When)、どのようにやるか(How)といった道筋が実現可能なものでなければ意味がありません。
進むべき道筋がきちんと示されていれば、取るべき行動が明確になり、部下が判断に迷って迷路にはまり込むリスクを避けることができます。
ビジネスの現場で広く使われている「SMARTゴール」の考え方は、この問題を回避するための極めて実践的なフレームワークです。SMARTとは、目標が適切な条件を満たしているかを確認するための5つの視点を指します。
(1)Specific(具体的):行動レベルが明確になっている
(2)Measurable(測定可能):達成・未達を判断できる基準がある
(3)Achievable(達成可能):現実的で努力すれば届く水準にある
(4)Relevant(関連性):会社やチームのゴールと整合性がある
(5)Time-bound(期限):いつまでにやるかが決まっている
SMARTという手法が有効なのは、目標に含まれる曖昧さを意図的に削ぎ落とす機能を持っているからです。適切に設定された目標は、抽象的な期待を具体的な判断基準へと変換し、部下の行動を力強く前に進めます。評価の軸が共有されることで、組織内の公平性が保たれ、チーム全体のパフォーマンスが底上げされます。
欧米企業やグローバル企業で成果を出し続ける上司は、戦略、現場、人材という複数の視点から見て、妥当な目標を設定する能力に長けています。彼らは単に結果を求めるだけでなく、「どのような判断が現場で求められているのか?」を明確化することで部下を育てており、これが世界水準のマネジメントの本質ということができます。
