上からの指示を求めてしまうという「深刻な問題」
欧米企業の上司が自ら目標を設定するのに対して、日本企業の場合は、そもそも目標設定の権限が与えられていないケースが少なくありません。
大企業であれば、経営企画部が各チームの目標を設定し、中小企業ならば、社長や経営幹部から有無を言わせない目標が降りてきます。多くの日本企業では、目標を自律的に「設計する」ことよりも、上層部から与えられた目標をいかに「達成するか」という点に重心が置かれています。こうした環境に慣れてしまうと、どんなに優秀な上司であっても、それを「当然のこと」と受け入れるようになり、次第に何の疑問も持たなくなるようです。
僕が遭遇した日本人上司のエピソードを紹介します。ある外資系企業のコンサルティング案件で、僕はその地域を統括する外国人駐在員の責任者と日本人の部門長と一緒に、チーム運営の課題について議論していました。日本人の部門長の口から、「ウチの会社には経営企画部がないから、我われはどうしたらいいかわからないんです」という愚痴というか、不満が飛び出したのです。
その言葉を聞いた瞬間、外国人責任者と僕は思わず絶句しました。
外資系企業では、マネジャー自らが担当部門の目標を設定することが大前提とされていますが、日本人の部門長は「目標が上から降りてこない」という状況に対して、強い不安を抱いていたのです。
この反応は、本人の能力不足が原因ではありません。長年にわたって、「目標は与えられるもの」という環境でキャリアを重ねてきたため、自ら目標を立てて、その結果に責任を負う……という行為が、許容範囲を超えた過度なリスクとして感じられるようになっていたのです。そのポジションに就いているのは、高い業務遂行能力が認められた結果です。それほど優秀な人材であっても、いざ目標設定の局面になると、その権限を誰かに委ねたいという心理が働いてしまうのです。
自律的な目標設定を回避して、外部からの指示を求めてしまう構造こそが、現在の日本企業が直面している極めて深刻な課題であるといえます。
*ピョートル・フェリクス・グジバチ著『世界の一流は「部下」に何を教えているのか』(クロスメディア・パブリッシング)より一部抜粋して再構成。
(第1回から読む)
【プロフィール】
ピョートル・フェリクス・グジバチ(Piotr Feliks Grzywacz)/連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者。プロノイア・グループ株式会社代表取締役、株式会社GA Technologies社外取締役。1973年ポーランド生まれ。2000年に千葉大学研究員として来日。モルガン・スタンレーで組織・人材開発を担当後、グーグルで人材育成統括部長として、リーダーシップ開発と組織変革を統括。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。ベストセラー『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』『NEW ELITE』他、多数の著書がある。グローバル企業での豊富な経験を活かし、日本企業の組織変革や人材育成に関するコンサルティングを行っている。