腰椎には常に荷重がかかるため、さまざまな疾患が起こりやすい
傷が小さく、手術当日から歩行できる椎間板ヘルニアの最新術式
腰痛を引き起こす疾患の中でも、20代から40代の比較的若い世代に多く見られるのが「椎間板ヘルニア」です。
「椎間板」は椎骨の間でクッションの役割を果たしており、中央のゼリー状の「髄核」を、丈夫な「線維輪」が取り囲む構造になっています。スポーツや仕事で椎間板に強い圧力がかかったり、加齢や負担の蓄積で線維輪の弾力性が失われて亀裂が入ったりすると、中の髄核が脱出することがあります。これが近くの神経を圧迫し、下肢に響くような痛みやしびれを引き起こすのが椎間板ヘルニアの“正体”です。さらに運動神経が圧迫されれば、下肢の筋力低下による歩行困難を招く場合もあります。
椎間板ヘルニアは時間の経過とともに自然に症状が和らいだりすることも多いため、まずは内服治療、ブロック注射、コルセットによる装具療法などの保存的治療で経過を見ることが基本となります。しかし、保存的治療で十分な効果が得られない場合や、筋力低下や歩行障害などの重篤な神経症状がある場合には椎間板内酵素注入療法や内視鏡手術を検討します。
現在は「全内視鏡下脊椎手術」などの低侵襲手術が普及しており、わずか7ミリ程度の小さな傷から内視鏡を用いてヘルニアを取り除くことが可能です。傷が小さく出血も少ないため、手術当日から歩行できるケースも多く、患者さんの身体的負担は大きく軽減されています。
腰椎椎間板ヘルニアに対する全内視鏡下脊椎手術は「硬性内視鏡」と呼ばれる細い内視鏡を使用する。皮膚の切開は6~8ミリ程度が1か所で、手術後数時間で歩行可能となり、翌日には退院できることも
「全内視鏡下脊椎手術などの低侵襲手術で、患者さんの負担は劇的に軽減されています」と語る篠原光医師
■後編記事につづく:推計患者数500万人の「脊柱管狭窄症」治療の最新トレンド 低侵襲手術で患者負担は大幅に改善、脊椎に“脇腹からアプローチ”する画期的な術式も
【プロフィール】
篠原光(しのはら・あきら)/東京慈恵会医科大学整形外科学講座講師。東京慈恵会医科大学附属病院脊椎・脊髄センター副センター長、整形脊椎脊髄外科チーフ。2001年同大学医学部卒業。日本専門医機構認定整形外科専門医・脊椎脊髄外科専門医。日本脊椎脊髄病学会認定指導医・脊髄モニタリング医。日本低侵襲脊椎治療学会理事。最先端のハイブリッド手術室を用いた脊椎手術や、術中脳脊髄モニタリングを駆使した安全で低侵襲な治療の普及・発展に尽力している。
取材・文/岩城レイ子


