「Jプローブ」を使った「低侵襲腰椎後方椎体固定術(MIS-TLIF)」
脊椎外科に革命をもたらした画期的な術式とは
高齢の患者さんの場合、脊柱管狭窄症に骨粗鬆症を併発しているケースが多く見られます。骨粗鬆症は閉経後の女性に多い病気と思われがちですが、男性にも起こり得る疾患であり、圧迫骨折の主な原因となります。
骨粗鬆症を伴う患者さんに脊椎固定術を行なう場合、骨が脆弱なため、時間の経過とともにインプラントが緩んでしまうリスクがあります。
そこで現在は、骨粗鬆症椎体における初期固定性向上を目的として、小さな傷から特殊なスクリューを挿入し、そのスクリューの側孔から生体用セメントを注入して、インプラントと骨との固定力を高める治療(CAFPS)も行なわれています。こうした技術の進歩により、骨粗鬆症を伴う患者さんに対しても、より安定した脊椎固定術が可能となってきています。
さらに、症状が進行し、椎間板の変形やつぶれによって脊柱に大きな変形が生じた症例に対しては、脊椎外科に大きな変化をもたらした「側方進入腰椎椎体間固定術(LIF)」が有効です。従来は背中を切開し、骨を削って神経の圧迫を取り除いた後、神経の奥にある椎間板へ「ケージ」と呼ばれるインプラントを挿入していました。しかし、この方法では神経や骨を避けて操作する必要があるため侵襲度が高く、大きなケージを挿入することが困難でした。
一方、側方進入腰椎椎体間固定術(LIF)は脇腹からアプローチするため、約3センチの小さな傷から椎間板の側方に到達することができます。そのため、後方から大きく骨を削る必要がなく、出血も抑えられます。また、従来よりも大きなケージを挿入できるため、骨との接地面積が広がり、腰椎の並びも整うことで神経の圧迫を改善することができるうえ、腰椎が安定することで神経症状の改善が期待できます。
術中は神経モニタリングシステムを駆使し、神経の損傷を避けながら安全にインプラントを留置することが可能で、現在、LIFは広く普及しつつあります。私はLIFの指導者として、多くの脊椎脊髄外科専門医にこの技術を伝えており、今後はさらに全国の医療機関に安全に広がっていくことを期待しています。
腰痛を単なる「我慢するもの」と捉えず、まずは専門医のもとで原因を正しく診断することが重要です。そして、最新の知見に基づき、ご自身に適した治療法を選択することが、健康な生活を取り戻す第一歩となります。
「腰痛を単なる『我慢するもの』と捉えず、専門医のもとで原因を特定してください」と語る篠原光医師
■前編記事から読む:若い世代にも多い「椎間板ヘルニア」のメカニズムと最新の治療法 近年は低侵襲手術も普及、“翌日退院”を可能にする「7ミリの傷」の最新術式
【プロフィール】
篠原光(しのはら・あきら)/東京慈恵会医科大学整形外科学講座講師。東京慈恵会医科大学附属病院脊椎・脊髄センター副センター長、整形脊椎脊髄外科チーフ。2001年同大学医学部卒業。日本専門医機構認定整形外科専門医・脊椎脊髄外科専門医。日本脊椎脊髄病学会認定指導医・脊髄モニタリング医。日本低侵襲脊椎治療学会理事。最先端のハイブリッド手術室を用いた脊椎手術や、術中脳脊髄モニタリングを駆使した安全で低侵襲な治療の普及・発展に尽力している。
取材・文/岩城レイ子

