近年重要性が高まる「LTV」と「CAC」
妄想さん:さて、ここまで理解できたことをビジネス的な表現にしてみると、LTVとCACになります。近年重要性が高まっている考え方です。
妄想さん:LTVやCACを厳密に計算できるようになる必要はありません。こういう考え方だと知れば充分です。LTV(ライフタイムバリュー)は日本語に言い換えると「顧客生涯価値」で、1人の顧客が生涯でどれだけお金を落としてくれるのか、という考え方になります。ちなみに、実務上では売上や粗利ベースのLTVなどいろいろな定義があり、粗利ベースのLTVが活用されることが多いです。
一ノ瀬君:一生という長期で考えるのがLTVってことね。
妄想さん:CAC(カスタマーアクイジションコスト)は「顧客獲得単価」で、新しい顧客を1人獲得するためにかかったコストのことです。
一ノ瀬君:LTVが1人の顧客が生涯で落としてくれるお金で、CACが1人の顧客獲得にかかるコストだから、LTV>CACなら短期的には赤字でも、長期で考えると利益が出るから問題ないってことか。
妄想さん:もう少しつけ加えると、LTVとCACはバランスを考える必要があります。
CACが安ければ顧客が少なくてもプラスになる(『数字から企業の「リアル」がわかる! 未来を読み解く決算書』より)
たとえばLTVが1万円、CACが9900円で1万人の顧客を獲得するとトータルで100円×1万人=100万円のプラスになります。一方で広告費を抑制しCACを8000円にして1000人の顧客を獲得するとトータルで2000円×1000人=200万円のプラスになります。
一ノ瀬君:あまりCACをかけすぎると、薄利多売状態になって利益が減ってしまうこともあるんだね。
妄想さん:もちろん、メルカリのネットワーク効果の例のように、シェア争いが最も重要となり、顧客の獲得がより重視されることも多いため、一概にCACを減らして利益を増やせばいいという話ではありません。LTVとCACを把握したうえで、どれだけの顧客を獲得することが最善かを考えることが大切です。
一ノ瀬君:CACを抑えすぎると充分なシェアを取れないこともあるもんね。
妄想さん:そして、デジタル化が進み顧客データが取りやすくなったことで、このLTVとCACの考え方が重要性を増しています。
サブスクリプションのように契約によって継続課金がされるわけでなかったとしても、世の中にある多くの事業は基本的にはリピータービジネスです。日高屋のような飲食店であっても、基本的には常連さんが売上の多くを支えています。
一ノ瀬君:僕も、週4で通ってるし(笑)。
妄想さん:そのため長期視点をもち「1人のお客さんにどれだけ長く、どれだけ多く利用してもらえるのか(LTV)」と「そのお客さんを連れてくるのにいくらかかったのか(CAC)」という2つの視点をもつことが、ほとんどすべてのビジネスで重要になっています。
一ノ瀬君:そもそも大半のビジネスでLTVとCACの考え方が大切で、データ活用がしやすくなって重要性が増したんだね。
妄想さん:先ほどfreeeの話で解約率が大事だった(第2回記事参照)のは、解約率低下がLTVの増加に直結するためです。
妄想さん:同じ考え方を飲食店に応用すれば「常連さんが離れることを防ぐ」というのが、その1つになります。新規の獲得にばかり目を向けてリピーターが作れず、売上が積み上がっていかないのは、多くのビジネスでありがちな失敗です。
一ノ瀬君:なるほどね、かなり応用がきく考え方だね。
(第1回から読む)
※妄想する決算・著『数字から企業の「リアル」がわかる! 未来を読み解く決算書』(高橋書店)を元に一部抜粋して再構成
【プロフィール】
妄想する決算/1990年福島県生まれ。コンテンツクリエイター。投資に関するコンテンツは数多くあるが、決算書からビジネスモデルを紐解くコンテンツが少ないと感じ、音声メディア「voicy」で「10分で決算が分かるラジオ」を配信開始。上場会社が出す決算の1次情報とメディアから出てくる2次情報の中間1.5次情報を10分にまとめた内容で人気に。番組の総再生回数は870万回を超える。「ForbesJAPANクリエイター100」に選出。今は、海外や日本を転々としながら、Voicyを週に5日更新しつつ、日興証券フロッギー、楽待など、web媒体での連載も多数。2026年3月、『数字から企業の「リアル」がわかる! 未来を読み解く決算書』(高橋書店)を出版。
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