MLCC需要の拡大で株価が急騰した太陽誘電(写真:時事通信フォト)
電子部品メーカーの太陽誘電の株価が急騰している。かつてはiPhone向け部品を手がける「アップル銘柄」として知られた同社だが、いま市場が注目するのはAIサーバー向け「積層セラミックコンデンサ(MLCC)」の需要拡大だ。太陽誘電株の急騰劇の背景はどのようなものか。個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が解説する。
事業の選択と集中で「スマホ依存」から脱却
電子部品メーカーの太陽誘電(東証プライム・6976)の株価が、2026年に入って急騰している。3月末の終値は約3600円台だったが、6月1日には1万6000円を超え、まさに「年初来4倍超」という驚異的な上昇を演じている。かつては「アップル銘柄」として知られた同社だが、今や「AIサーバー銘柄」として市場の注目を集めている。今日は、いったいこの会社はどのような会社で、なぜ株価がここまで上がっているのかの情報整理を行い、今後の展望を考えていきたい。
太陽誘電は1950年に群馬県高崎市で創業した電子部品メーカーだ。主力製品は「積層セラミックコンデンサ(MLCC)」。コンデンサとは電気を一時的に蓄え、ノイズを除去する電子部品で、たとえばスマートフォン1台に数百個が搭載されていると言われるほど、あらゆる電子機器に欠かせない存在だ。同社はMLCCの世界大手として、村田製作所(6981)、TDK(6762)とともに「電子部品3強」の一角を占める。
2026年3月期の売上高に占める製品別構成比を見ると、コンデンサが70.9%と圧倒的。インダクタ(コイル)が18.1%と続き、この2製品だけで約9割を占める。長年「アップル銘柄」として知られてきた背景には、iPhoneをはじめとするアップル製品への搭載比率の高さがある。しかし近年はAIサーバーやデータセンター、自動車の電子化・電動化向けの売上が急拡大。2026年3月期の販売先別構成比(四半期ベース)では、自動車が30%、情報インフラが26%、通信機器が20%と、スマートフォン依存からの脱却が着実に進んでいる。
地域別では、中国29.5%、香港14.2%、台湾11.5%など海外が売上全体の94%を占めるグローバル企業だ。国内外に製造拠点を持ち、日本・中国・マレーシア・欧州などで生産を行っている。
2026年5月8日に発表された2026年3月期の連結決算は、市場予想を上回る好内容だった。売上高は前期比4.1%増の3553億円と着実な伸びを見せたが、注目すべきは利益の急拡大だ。営業利益は前期比91.2%増の199億円とほぼ倍増し、経常利益は129.4%増の241億円、そして当期純利益は前期比なんと535.9%増の148億円という驚異的な増益を記録した。これほどの増益幅となった背景には、主力の自動車向けおよび情報インフラ・産業機器向けの売上が増加したことに加え、為替差益47億円の計上という追い風もあった。また、積層セラミックコンデンサの売上高は前期比8.5%増の2517億円、インダクタも4.5%増の643億円と、主力2製品がともに成長した。
一方で複合デバイス(通信用デバイス)は35.6%減と大幅に落ち込んでいる。工場閉鎖に伴う減損損失21億円や事業構造改善費用15億円の計上など、事業の選択と集中が進んでいることも決算から読み取れる。
2027年3月期の連結業績予想も、増収増益予想であり、自動車の電子化・電動化やAIサーバーなど情報インフラの需要拡大を見込み、営業利益は50%増の300億円を目指している。
