くじらの竜田揚げはこのボリュームでもすいすいいける
最後はくじらで締めた
さて、ここへ来たら、やはり、くじらを食べよう。刺身もくじらベーコンもいいが、シャリキンハイサワーには竜田揚げが合うと思う。
ほどなくして、くじら竜田揚げが出てきた。なかなかのボリュームで、持て余すのではないかと心配したが、食べてみると衣が軽く、肉もしつこくなくて、とても、うまい。
シャリキンハイサワーをもう1セットもらう。そして、くじら竜田揚げをもうひとつ、口へ放り込む。飲み、食べ、また飲み、食べる。いいテンポになってきている。スマホで競馬の結果を見ると、京都メイン平安ステークスでは、私が軸に選んだナルカミが8着に敗れ、私の小さな夢ははかなく消えていた。
しかし落胆ばかりもしていられない。今日の楽しみは、大相撲だ。10勝3敗の若隆景は同じく3敗の琴栄峰と対戦するし、結びでは2敗で優勝争いの先頭を走る霧島が伯乃富士と激突する。
綱取りを目前に平幕まで落ちた霧島と、関脇から幕下まで陥落し、復活してきた若隆景。ふたりの関取による優勝争いは、2横綱2大関が休場した大相撲を支えていた。相撲好きだった坪内さんなら、この5月場所をどう見ただろう。
くじら竜田揚げをまたひとつ食べ、シャリキンハイサワーをぐびりとやり、私は、今は亡き坪内さんと一緒にテレビ観戦している妄想を楽しんだ。
ふと気が付けば、賑やかだった隣の兄さんたちは席を立っていた。外に出ると、日は落ちかけている。すずらん通りの看板に灯りが点いていた。世田谷線で下高井戸へ向かう。坪内さんが好きだったという「さか本そば店」を覗いてみようか――。電車が松陰神社前を過ぎる頃、そんなことを考えていた。
三軒茶屋「すずらん通」の中にある昼飲みの聖地(「割烹 味とめ」東京都世田谷区太子堂4-23-7)
【プロフィール】
大竹聡(おおたけ・さとし)/1963年東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒。出版社、広告会社、編集プロダクション勤務などを経てフリーライターに。酒好きに絶大な人気を誇った伝説のミニコミ誌「酒とつまみ」創刊編集長。『中央線で行く 東京横断ホッピーマラソン』『下町酒場ぶらりぶらり』『愛と追憶のレモンサワー』『五〇年酒場へ行こう』など著書多数。「週刊ポスト」の人気連載「酒でも呑むか」をまとめた『ずぶ六の四季』や、最新刊『酒場とコロナ』が好評発売中。

