AIの急速な進化は進路選択にも影響(イメージ)
「この業界、数年後にはギュられそう」──いま、就活生のあいだではこんな言葉が飛び交っている。「ギュられる」とは、シンギュラリティの到来に由来し、AIの普及によって人間の仕事や役割が代替されることを指すスラングだ。
かつて、AIが人間の知能を超えるシンギュラリティは、2045年頃に訪れると予測されていた。だが、近年では幅広い知的作業を人間程度にこなせるとされるAGI(汎用人工知能)や、人間を上回るASI(人工超知能)が、2030年代前半までに実現すると予測する声もあり、そのフェーズが早まっているように感じる人も増えているようだ。
もちろん、これは確定した未来ではない。しかし、こうした予測は就職活動の真っ只中にいる大学生の企業選びにも、大きな影響を与えているという。AIの進化が進路選択に与える影響についてレポートする。【前編】
「AI導入後に配置転換された先輩の話を聞いて…」
都内の私立大学に通う男子学生・Aさん(21歳/文学部)は、当初、広告代理店や出版業界でのクリエイティブな仕事を志望していた。しかし、美術大学を卒業した先輩の実体験を耳にし、希望するビジョンが揺らいでいる、と語る。
「キャッチコピーを考え、人々の購買行動を動かす仕事がしたいと思っていました。しかし、最近では大学で生成AIについて学ぶ機会も増え、AIで簡単に広告案が作れることを知り、人間が心血を注いで作る時代はもうすぐ終わるのではないかと不安になったんです。周囲の学生との会話や説明会でも、『この業界はギュられるよね』という会話が普通に飛び交っています。
また、美大を卒業した7歳年上の先輩に聞いた話も、進路への不安が生まれるきっかけでした。先輩は広告バナーなど、ネット広告のデザインを作っていたそうなのですが、『2年前からAIが導入されて、まったく無関係の部署に異動させられた』と肩を落としていました。もちろん、AIが仕事を奪ったと単純化することはできませんが、専門的に学び、就職しても、仕事自体がなくなるリスクがあるのだと実感しました」(Aさん)
