「クールジャパン機構」はなぜ機能不全に陥ったのか(赤沢亮正・経産相)
日本の成長戦略を担うはずだった組織の機能不全が明らかになった。安倍政権肝煎りで設立された官民ファンド・クールジャパン機構の累積損失が500億円を超え、政府は廃止を含めた検討を始めるという。食や文化、最先端技術まで手広く投資先を広げたファンドはなぜここまで傷口を広げたのか。失敗の要因を探った。【前後編の後編】
マレーシアで豆苗を600円で販売
経済産業省管轄のクールジャパン機構(以下、CJ機構。正式名称は海外需要開拓支援機構)は、2025年度の決算発表で累積損失が540億円に達したと発表。2025年度は売上高44億円に対して損失156億円の赤字だった。
CJ機構の「投資失敗」と指摘される事例は多い。
2016年10月にマレーシア・クアラルンプールの一等地に開業した高級百貨店「イセタン・ザ・ジャパンストア」もその一つだ。三越伊勢丹ホールディングスとの共同で、CJ機構は半分の10億円を出資したが、開業後は閑古鳥が鳴く有様だった。
2018年に現地を見に行って愕然としたという作家の古谷経衡氏が振り返る。
「あまりにガラッガラで、すさまじい衝撃を受けました。食品フロアの農産物コーナーでは豆苗が600円、山梨県産のブドウが2万円の高値で売られていた。値付けが異常で誰も来ないわけです。せめてアニメや漫画関連は充実しているだろうと別のフロアに行くと、スター・ウォーズやディズニーなどのグッズばかり。クールジャパンの冠を掲げる機構への違和感がさらに膨らみました」
古谷氏が惨状をレポートしたネット記事は話題になる。その後、CJ機構は保有するザ・ジャパン・ストアの全株式を伊勢丹側に譲渡すると発表。2018年7月に事業から撤退した。
「結局、何の採算も取れず撤退した。洋服やグッズは日本に返送できますが、農産品は現地で廃棄せざるを得なかったはず。生産者にとっては悲しい結末ですよね」(同前)
古谷氏は、CJ機構の投資案件がピント外れになる原因をこう分析する。
「お上が海外に売り込もうとする時に『クールジャパン』の言葉が付けられるわけですが、政治家や官僚はコンテンツに通じていない。ゆえに、彼らでもわかるファッションや農産品が含まれていったのでしょう」
