父の遠距離介護について語ってくれた、風見しんごさん
実家の広島でひとり暮らしをしていた父に現われた異変。約10年にわたる介護を経験した風見しんごさん(63)は、介護を通じて父と向き合いながら、「自らの役目」を知ることができたと語る。
「体には何の問題もなかった」ことがネックに
父がアルツハイマー型認知症と診断されたのは2003年のこと。父はまだ65歳だったので「まさか」と思いましたが、振り返れば、その前から兆候はありました。
母はクモ膜下出血で倒れて半身不随になり、6年間の介護生活の末、1999年に他界しました。僕は実家の近くに住む父の同級生と親交があり、その方から「ちょっと様子がおかしい」という連絡があったんです。
友人たちと一緒に小旅行に出かけた時、夜中に旅館の中をうろうろする。高速道路の真ん中で「信号が赤だ」と言って車を止めるなど、「物忘れ」というレベルの話ではありませんでした。
久しぶりに会った父の目は、それまでとは明らかに違っていた。財布の中身を何度も確認する、犬の餌にチョコレートをのせる……。「もっと早く会いに行っていたら気づけたかもしれない」という後悔は今でもあります。
当時は介護保険が始まって2、3年しかたっていないタイミングでしたが、運良く僕の友人が地元で医師をしており、介護に前向きに取り組んでいました。彼やケアマネさんに相談しながら遠距離介護を続けました。
当時、父の介護でネックだったのは、体には何の問題もなかったこと。あくまで認知機能の低下だけなので、自分で生活ができてしまう。しかも認知症の症状は一日中出ているわけではない。ふとした時に自分の判断で動いてしまうので、そこに制限を加えることが難しかった。コンロにスイッチを入れないようにする、車に乗らないようにキーを隠すなど、万一に備えるようにしました。
