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川辺謙一 鉄道の科学

電車の編成によって異なる「MT比」って何? 山手線は「6M5T」、九州新幹線800系は「6M」、サンライズ出雲は「2M5T」

なぜ付随車があるのか

 それでは、なぜ電車には付随車があるのでしょうか。それは、必要な走行性能を発揮させながら、コストダウンと軽量化を図るためです。電動車は、基本的にモーターや制御装置などの電機品が多いため、付随車よりも製造や保守にかかるコストが高く、重量が大きいです。このため、求められる走行性能を満たす範囲で、編成に付随車を組み込み、搭載する電機品を減らすことで、コストダウンと軽量化を図っています。

 ただし、編成のすべての車両を電動車にした電車も存在します。たとえば新幹線では、初代電車の0系が最大16両編成で、すべての車両が電動車でした。近年の新幹線電車では、一部車両を付随車にした例があるいっぽうで、九州新幹線や西九州新幹線を走る電車(800系6両編成・N700系8両編成・N700S6両編成)のように、急勾配に対応するため、すべての車両を電動車にした例もあります。

 つまり、求められる走行性能(加減速度・登坂性能)によって、MT比が変わるのです。

MT比が特殊な例

 最後に、日本の電車における、電動車の構造がユニークなものや、MT比が特殊なものを紹介しましょう。

 JR西日本の一部の電車は、「0.5Mシステム」と呼ばれる構造を採用しています。これは、1両にモーター付きの台車(電動台車)とモーターなしの台車(付随台車)を設置する構造で、システムを1両単位で完結させ、編成内の各車両の重量の均一化や編成組成の自由度向上などを目指したものです。

「サンライズ出雲」「サンライズ瀬戸」の寝台電車(285系)は、車両構造だけでなく、MT比も特殊

「サンライズ出雲」「サンライズ瀬戸」の寝台電車(285系)は、車両構造だけでなく、MT比も特殊

 いっぽう、電動車の比率が低い電車も存在します。たとえば「サンライズ出雲」「サンライズ瀬戸」で使われている寝台電車(285系)は、7両がユニットになっており、そのうち2両が電動車で、MT比は2M5Tです。付随車の車体は2階建て構造ですが、電動車の車体は屋根上や床下に機器を搭載するため、平屋構造になっています。

 JR貨物には、「スーパーレールカーゴ」という愛称を持つ、コンテナ輸送に特化した貨物電車(M250系)があります。これは、MT比が4M12Tという特殊な電車で、編成の前後に電動車が2両ずつ(計4両)あり、残り12両が付随車となっています。機関車が貨車をけん引する貨物列車とくらべると、加減速性能が高く、電動車の車軸1本あたりにかかる荷重(軸重)が機関車よりも軽いため、レールに与える負荷が小さく、高速走行が可能です。

在来線電車と新幹線電車の編成の例。それぞれMT比が異なる。画像:筆者作図

在来線電車と新幹線電車の編成の例。それぞれMT比が異なる。画像:筆者作図

【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術解説者。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。

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