九州新幹線の800系。すべての車両がモーターで駆動する
鉄道は、多くの人にとって交通の手段としてだけでなく、趣味や娯楽の対象としても親しまれており、ときに人の知的好奇心を刺激してくれる。交通技術解説者の川辺謙一氏による連載「鉄道の科学」。第41回は「電車のMT比」について。
電車はすべての車両にモーターがついているとは限らない
前回は、電車が走るためのモーター(日本産業規格[JIS規格]や技術文書では「モータ」と表記)について述べました。また、鉄道業界では、動力源となるモーターを「主電動機(しゅでんどうき)」と呼ぶことにもふれました。ただ、これは一般になじみがない専門用語なので、この記事では動力源となるモーターのことを「モーター」と呼ぶことにします。
さて、みなさんのなかには、「電車はすべての車両にモーターがついているのでは?」と思った方もいるかもしれません。たしかにそのような例もありますが、実際はそうでない例のほうが多いです。つまり、電車では、モーターがついていない車両も組み込まれている場合があるのです。
たとえば現在東京のJR山手線で走る電車(E235系)は、11両編成で、6両がモーター付き車両で、5両がモーターなしの車両です。モーター付き車両には、車両形式に「モハ」というカタカナ2文字がついています。「モハ」の「モ」はモーター付き車両、「ハ」は普通車(むかしの3等車)を意味します。
JR山手線の電車(E235系)。11両編成で、6両が電動車、5両が付随車
鉄道では、電車のうち、モーターがついている車両を「電動車(でんどうしゃ)」または「M車」と呼びます。いっぽう、モーターがついてない車両を「付随車(ふずいしゃ)」または「T車」と呼びます。「M」と「T」は、それぞれ英語で電動車を意味する「motor car(モーターカー)」と、付随車を意味する「trailer(トレイラー)」に由来します。
電車では、1両編成のものを除けば、複数の車両がユニットになっており、そこに電動車と付随車が混在する場合が多いです。このため、先ほどのJR山手線の電車のように、6両の電動車と5両の付随車、合わせて11両の編成がユニットになっていれば、その編成の「MT比」を「6M5T」と表現します。「MT比」とは、電車の編成の電動車と付随車の比率を示します。

