名古屋場所で復活Vを果たした安青錦(写真・時事通信フォト)
7月30日、日本相撲協会は名古屋場所後の定例理事会において、来年1月の初場所から幕内最高優勝の賞金を現行の2倍となる2000万円にすることを決めた。十両以下の優勝賞金も増額され、関取の月給も増額改定となった。
優勝賞金は十両が「200万円→300万円」、幕下は「50万円→70万円」といったかたちで序ノ口優勝までがアップとなり、これは33年ぶりの改定。三賞の賞金も200万円から300万円に上がった。関取の月給は横綱が「300万円→330万円」になり、十両の「110万円→120万円」まで、概ねそれぞれ約1割のアップとなる。相撲ジャーナリストが言う。
「前年度の相撲協会は約13億円の黒字。3年連続の黒字を還元する形で力士の待遇を改善しようとする動きだといいます。物価が高騰するなか、8年間も据え置かれてきた給与、幕下以下の場所手当も改定された。八角理事長(元横綱・北勝海)は“力士ファーストだ”と話しているが、65歳定年後の5年間の再雇用など親方ばかり厚遇されていることへのガス抜きの意味合いもあるでしょう」
具体的にどれぐらい力士の収入が増えるのか。名古屋場所で優勝した安青錦がこの7月に手にした額は以下の通り。
・給与(関脇)=180万円
・力士報奨金=61万2000円(持ち給金153円を4000倍した額)
・優勝賞金=1000万円
・技能賞=200万円
・懸賞金=1242万円(獲得207本×手取り6万円で計算)
合計2683万2000円を手にした。新たな報酬体系でも報奨金と懸賞金に変化はない。関脇の給与が「180万円→200万円」、優勝賞金が「1000万円→2000万円」、技能賞の賞金が「200万円→300万円」の増額となる。この1か月だけで収入は「1120万円アップ」して3803万2000円になる計算だ。
基本給より成果に基づく報酬が大きい
年収ベースで見ると増額はもっと大きくなる。2025年の安青錦は、1月の初場所では西十両5枚目だったのが、11月の九州場所では新関脇として初優勝を飾り大関昇進を決めた。まさに出世街道を猛スピードで昇った1年だった。各番付での給与と年2回の賞与、場所ごとの報奨金と懸賞金に、九州場所での優勝賞金、5場所で6個の三賞賞金を加えると安青錦の2025年の年収概算は約7000万円となる。これが新たな報酬体系であれば、十両1場所、幕内3場所、三役2場所での給与がプラス190万円、優勝賞金がプラス1000万円、三賞賞金がプラス600万円で1790万円の上積みとなる。約25%の増額である。相撲担当記者が言う。
「基本給である月給・賞与よりも、優勝や三賞の賞金のアップ率のほうが高いのが特徴でしょう。2005年の朝青龍は年6場所をすべて優勝して1年で賞金6000万円を手にしたが、そういう力士が出てくれば優勝賞金だけで1億2000万円を手にすることになる。
優勝も三賞もない平幕の力士であれば月給・賞与で年210万円の増額ですが、これは懸賞金35本の取組に一度勝つだけで手にできる額と同じ、という見方もできる。横綱戦なら懸賞金60本(360万円)がかかることもある。安定した基本給よりも、本場所での結果による収入のほうが大きいのは、“土俵にはカネが埋まっている”という言葉が伝わる角界らしい報酬体系と言えるでしょう」
幕下以下の養成員へ場所ごとに支払われていた手当も6~9%アップとなるが、幕下は6場所で9万円、序ノ口は同3万円とわずかな増額にとどまる。相撲部屋で衣食住の面倒を見てもらえる角界ならではの仕組みだが、上位との格差は広がる。人材確保も含め角界全体の発展につながる報酬体系と言えるのか、一考の余地もありそうだ。
