よくあったのはドライアイスを脱脂綿で包まず、故人の皮膚に直接当てているケースです。病院から自宅に戻った故人は浴衣を着ていることが多いのですが、体の上にそのままドライアイスを置くと、襟元など露出した皮膚が冷えすぎて変色してしまうことがあります。本来は脱脂綿を間に入れて、皮膚を保護しないといけません。
以前は、故人の口が開かないよう顎から頭頂部までバンドで固定したり、胸の上で組んだ両手を合掌バンドで留めたりする病院が多くありました。体がむくんだ遺体に、この状態でドライアイスを当ててしまうと、バンドの跡が皮膚についたまま取れなくなります。
腹部にドライアイスを置く際は、手が凍ってしまわないよう、胸の上で組んだ手をいったんほどいて体側に下ろしてから、ドライアイスを当てるべきです。
硬直が始まる前に、枕は高めにしておいて、頭部のバンドを外しロール状にした脱脂綿で顎を固定します。硬直したあとも、数日後には硬直が解け始めるので油断はできません。
葬儀社スタッフは、このような配慮をしています。さらにドライアイスは両手で持ち、故人の体にそっと置くのが基本です。私は以前、遺族から「ドライアイスの処置が丁寧だったので、依頼して良かったと思った」と言われたことがあります。
ドライアイスの当て方には、故人への配慮と葬儀社の技量が明確に表れます。遺族は、その所作をよく見ておくとよいでしょう。ぞんざいに扱っているようなら、葬儀社を替えたほうがいいかもしれません。
後編では、長期化する火葬待ちに対応する新しい技術について、くわしく解説していきましょう。
▼▼▼後編▼▼▼
【つづきを読む→】ドライアイスを使わず遺体を保つ「エンバーミング」が日本でも普及 そのメリットとデメリット
【プロフィール】
赤城啓昭(あかぎ・ひろあき):1級葬祭ディレクター。葬儀業界歴約30年。運営する「考える葬儀屋さんのブログ」は月間45万PVを達成し、ライブドアブログ OF THE YEARを受賞。近著に「子供に迷惑をかけないお葬式の教科書」。テレビ、新聞、雑誌、YouTubeなどでも葬儀現場の正しい情報をわかりやすく発信中。
ブログ:https://kangaerusougiyasan.com/
YouTube:https://www.youtube.com/@kangaerusougiyasan