葬式での焼香の所作不安を感じる人は多い(イメージ)
お葬式に参列したとき、自分の焼香の順番が近づいてきて、緊張した経験を持つ人は多いだろう。燦ホールディングス株式会社が2026年6月に発表した調査結果によると、7割以上の人が葬儀マナーについて不安に感じており、中でも「焼香の作法」が最も悩ましいと回答した。実際、ある葬儀社がYouTubeにアップロードしている焼香の解説動画は、再生回数が230万回を超えている。焼香の流れを確認しておきたい人が、それだけ多いことがうかがえる。
なぜ焼香がこんなにも人を不安にさせるのか、「本当に正しい」焼香はどのようにすればいいのか、葬儀業界歴約30年、1級葬祭ディレクターの赤城啓昭氏がくわしく解説する。【前後編の前編】
念のためYouTubeで焼香のマナーを学んだのに…
都内の上場企業に勤務する男性・佐々木さん(仮名・28歳)は、今年の春から総務部に配属されています。あるとき、82歳の元社長が亡くなり、社内規定に則って社葬が決定されました。佐々木さんも総務部メンバーとして受付の手伝いをする予定でしたが、突然の別件対応で、遅れて参加することになりました。
式場への移動中、佐々木さんは今日の焼香のことが急に心配になってきました。焼香は、去年祖母のお葬式で経験して以来です。遅れて参加するため、“前の人を真似すればいい”という甘い考えが通用するとは限りません。「焼香って、どうやってするんだっけ?」と思った佐々木さんは念のため、電車の中で葬儀社のYouTubeチャンネルを開き、焼香の解説動画を確認しました。
さて到着したのは開式40分後。僧侶の読経が終わりにさしかかっていたらしく、葬儀社のスタッフからは「受付は後にして、先に焼香を済ませてください」と言われ、式場に誘導された佐々木さんは、自分の“悪い予感”が当たっていたことを目の当たりにしました。つまり、全員の焼香が終わっており、これから焼香をするのは自分一人だったのです。
冷や汗がどっと出てきましたが、先ほど確認したYouTube動画を脳内で再生しつつ、なんとか焼香を終えました。
それから1か月後、葬儀社から葬儀の模様を編集した記録用動画データと、編集前の動画データが送られてきました。編集前の動画データには、佐々木さんが焼香する姿も映っており、それを観た佐々木さんは自分で自分にがっかりしました。焼香をしている姿がどこか慌ただしく、自信なさげなのです。
「手順は間違っていないはずなのに、なぜ?」
佐々木さんは、動画で手順を学ぶだけではうまくいかないのだと痛感しました。
