政府備蓄米の本来の目的はなにか
かつての減反は、国が主食用米の生産数量目標を配る制度だった。この仕組みは2018年産から廃止された。だが、政府がコメ作りから手を引いたわけではない。今も水田活用の直接支払交付金があり、飼料用米、麦、大豆などへの転換に公費が入る。市場で米価が上がり、「もっと主食用米を作れ」という信号が出ても、政府は別の作物を作る側にもお金を出す。何を作るかという農家の判断に、税金が入り続けている。
そこへ2024年のコメ不足が来た。集荷業者はコメを確保しようと高値を提示した。ライバルが60kgに3万円を出すなら、自分だけ2万円では集められない。JAであれ民間業者であれ、必要な量を確保しようとすれば高値集荷になる。これは誰かの陰謀ではなく、供給余力が小さい市場で起きる競争である。
本当に問題なのは、その後だ。普通の商品なら、需要が落ちて在庫が余れば、損をしてでも値下げして売る。倉庫代も金利もかかるからだ。ところがコメには、政府という巨大な買い手がいる。
政府備蓄米は本来、米価を守る制度ではない。不作などで供給が足りなくなる時に備える制度で、従来の適正備蓄水準は100万トン程度とされてきた。2026年7月時点では備蓄が32万トンまで減っている。だから備蓄を戻すこと自体には理由がある。重要なのは、何のために買うかだ。「不足に備え、決めた水準まで買う」のと、「米価が下がりそうだから農家を守るために買う」のでは意味が違う。
後者は備蓄ではない。価格支持である。実際、2007年の米価下落局面では、政府による34万トンの買い入れが価格下落対策として使われた経緯がある。
2025年には、政府が備蓄米を買戻し条件付きで売り渡した。将来、政府が買い手になる仕組みが見えていれば、市場参加者には「今すぐ安値で処分しなくてもよい」という判断が生まれる。これは制度から自然に生まれる誘因である。だからこそ、制度を責めるべきなのだ。