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ビジネス

《豊作でもコメ価格がそこまで安くならない本当の理由》「農家を守る」と言いつつ「米価を守る」自民党農政と農水省の勘違い そして消費者は高いコメを買わされる

消費者に高いコメを買わせることが「農家保護」なのか

 コメが足りなければ政府が売る。余って値段が下がりそうになると、農家保護を理由に買い入れ論が出る。主食用米以外を作れば補助金が出る。価格が上がっても下がっても政治と農水省が手を入れる。これでは市場が発する「足りない」「余っている」という信号が弱くなる。

 ここに自民党と農水省の根本的な勘違いがある。「農家を守る」と「米価を守る」を同じにしてはいけない。米価を高く保てば消費者が払う。政府が買い支えれば、今度は納税者が代金と保管費を払う。消費者には高いコメを買わせ、納税者には補助金や備蓄費まで負担させる。その仕組みを「農家保護」の一言で正当化してきた。

 しかも、価格を政治が支えれば、経営を変える圧力も弱くなる。OECDによると、日本では市場価格支持や生産量に応じた支払いなど、生産や貿易を特にゆがめやすい支援が2022~24年の生産者支援の78%を占めた。OECD平均より高い。高値維持そのものが、日本農業の改革を遅らせる。

 農家を守るなら、価格を固定するのではなく、農家が実力を発揮できる環境を作るべきだ。農地を集約し、農業法人の参入を広げる。JA以外の卸、小売、外食、輸出業者とも自由に取引できるようにする。水路管理、防災、環境保全のように社会全体が必要とする仕事には、その仕事への対価を払う。大災害や急激な供給不足には、対象と期間を限って支援する。

 逆に、価格支持・減反的な生産調整・生産量連動補助金で市場価格を動かし、そのうえ農家戸別所得補償や直接支払いまで恒久化する方向には進むべきではない。備蓄も、必要量と買い入れ方法を先に決め、価格対策から切り離すべきである。

 豊作なのにコメが十分に安くならないのは、怪しい誰か1人が価格を操っているからではない。長年の自民党農政と農水省の介入が、市場の調整を鈍らせる制度を積み重ねてきたからだ。

 日本の農家を、一律に「政府が守らなければ生きられない弱者」と決めつける必要はない。農地を広げ、コストを下げ、新しい販路を開き、輸出まで狙う経営者もいる。そうした農家まで補助金と価格支持の中に閉じ込める方が失礼である。

 政府が守るべきなのは、今の米価でも、今の農家の所得でもない。農地、人、資金が、より強い経営へ動ける市場である。

【プロフィール】
小倉健一(おぐら・けんいち)/イトモス研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立して現職。

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