ベストセラーで紹介された数字の根拠に疑問
葬儀費用の全国平均が世間で広く意識されたのは、宗教学者島田裕巳氏の著書『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)がきっかけでしょう。この本は2010年に発刊され、30万部のベストセラーになりました。
たしかにこの本の裏表紙と本文には
「日本人の葬儀費用は平均二三一万円。これはイギリス一二万円、韓国の三七万円と比較して格段に高い。浪費の国アメリカでさえ四四万円だ」
という趣旨の文章が掲載されています。
この文章を読んで、日本を含めた主要国の葬儀費用を調べた同一調査のデータだと思い込んだ人も多いでしょう。しかし、意図的かどうかは分かりませんが、実は2つの調査を混在させています。日本の葬儀費用は財団法人日本消費者協会が当時発表していたデータであり、海外の数値は、1990年代前半に神奈川県の冠婚葬祭業者が発表したものです。
当時この数値を見た私は、「海外の葬儀費用が極端に低すぎる」と感じました。
葬儀費用の比較をするときは、調査時期や、宗教儀式の有無、宗教者への謝礼などの諸条件をできるだけそろえなければなりません。私は日本消費者協会の調査報告書を既に持っており、さらに海外の数値の調査内容を入手したいと思ったので、神奈川県の冠婚葬祭業者に連絡を入れました。しかし「調査したスタッフが辞めたので詳細はわからない。報告書も残っていない」という回答でした。さすがに報告書が残っていないのは、調査の信頼性を疑われるのではないか、と当時思いました。
というわけで海外の数値について確証が得られなかったのですが、日本消費者協会の数値にも問題があります。