はたして日本経済の発展につながるのか(イラスト/井川泰年)
高市政権は、日米間税交渉で相互関税の税率引き下げと引き換えに87兆円の対米投資を約束している。「これは日本の2025年度の税収(84.2兆円)を上回る巨額であり、まさに“朝貢外交”だ」と憤るのは、経営コンサルタントの大前研一氏だ。いかに日本側に不利な条件となっているのか、大前氏が解説する。
暴君に“隷従”している高市政権
トランプ大統領の「不正蓄財」疑惑は底が知れない。前号で詳述したように、トランプ大統領のファミリー信託が今年1~3月(第1四半期)に売買した証券は、大統領の政策が株価や企業業績に影響を及ぼす可能性が高いアメリカを代表する大企業が中心だった。
さらに、トランプ大統領は7月に導入した税制優遇プログラム「トランプ口座」に拠出した企業の株を推奨し、自身も今年1~3月にそれを大量に購入していた。日本の首相が同じことをしたら「利益相反」「インサイダー取引」で即辞任だろう。
そんな横紙破りの強欲な暴君に“隷従”しているのが日本の高市早苗政権だ。たとえば、昨年7月に合意した日米関税交渉で赤沢亮正経済産業相(当時は経済再生担当相)は、相互関税の税率引き下げと引き換えに5500億ドル(約87兆円)の対米投資を約束した。これは日本の2025年度の税収(84.2兆円)を上回る巨額であり、まさに“朝貢外交”だ。
しかし、相互関税には米連邦最高裁判所が憲法違反の判断を示し、すべての国からの輸入品に150日間限定で一律10%の関税を課す大統領令を発動したことについても、米国際貿易裁判所が違法判決を下した。このためトランプ政権は通商法301条を根拠に「強制労働で製造された製品の輸入禁止措置が不十分」という理由で60か国・地域からの輸入品に7月24日から10~12.5%の新たな関税を課す措置を発動した。日本に課された税率は最高の12.5%である。なぜ、87兆円も貢ぐ日本に最高税率が課されたのか、極めて不可解だ。
赤沢経産相は記者会見で「今般の措置は遺憾でございます」と述べたが、すでに日本の対米投資は始まっている。政府は今年2月に第1弾として天然ガス発電、原油輸出インフラ、人工ダイヤ製造、3月に第2弾として次世代原発SMR(小型モジュール炉)と2件の天然ガス発電事業を発表した。その総額は最大1090億ドル(約17.8兆円)で進捗率は2割。赤沢経産相は「(今後も)緊密に連携を取りながら充実したプロジェクトを積み上げていくという基本的方針に変わりはありません」と臆面もなくコメントしている。
韓国やEU(欧州連合)も同じような投資を約したが、まだ具体的な案件を発表していない。日本だけが前のめりに合意を守る“従順な下僕”になっているのだ。ちなみに、通商法301条に基づく新関税の税率は韓国が12.5%、EUが10%である。なぜ日本の税率がEUよりも高いのか、全く理由がわからない。
