消費者が不利になる3つのポイント
葬儀において、料金トラブルがよく取り上げられる背景には、どうしても遺族側に「時間」「精神的なゆとり」「情報」の3つが不足するため、“不利”になりやすいという事情があります。
亡くなるとすぐ病院を出て行かなければいけないことが多く、火葬場の予約は早い者勝ちで時間に追い立てられます。大切な人を失ったばかりでは、なかなか冷静な判断はできません。そして「縁起が悪い」という言葉に代表されるように、人が亡くなることはできるだけ考えたくないので、葬儀情報の蓄積は日頃行われていません。
以上の理由で、遺族側が不利、言い換えると葬儀社側が有利になります。
遺族側が不利になるなら、そもそも取引をしない、つまり買わなければいいのですが、葬儀は取引を降りることができません。目の前にある亡くなったばかりの故人の遺体を、なんとかしないといけないのです。この不均衡な構図がさらに消費者を追い込みます。
20年前は「見積書が渡されなかった」人が3人に1人
この状況で売り手である葬儀社に求められるのは「誠実さ」と「分かりやすい説明を行う仕組みや技術」です。情報格差による不利という意味では、医者と患者の関係も同じはずですが、葬儀業界ほど問題にならないのは、医者の側に誠実さと、インフォームドコンセントなどの仕組みや技術が整っているからでしょう。
葬儀業界の実態はどうだったのか、振り返ってみましょう。
私が大学を出て葬儀業界に入った30年前、葬儀社スタッフの過半数は私から見て「ならず者」でした。体に絵が描かれている人もちらほらいて、サービス業というより敬語がろくに使えない短気な職人の集団でした。コンプライアンスという言葉も概念も無く、私は「大卒だから」という理由で殴られたことがあります。
今となっては信じられない話ですが、2005年に公正取引委員会より発表された「葬儀サービスの取引実態に関する調査報告書」によると、施主(葬儀費用を支払った人)のうち35.8%が「見積書を交付されなかった」と答えています。つまり遺族の3人に1人は、葬儀費用を口頭で伝えられただけということです。これでは何にいくらかかったのかといった「内訳」や詳細な「根拠」を確認しようがありません。